はじめに
戦慄怪奇ファイル コワすぎ!【口裂け女捕獲作戦】を視聴しました。監督は「ほんとにあった!呪いのビデオ」の「Ver.X3-4」、「The MOVIE1-2」を手掛けた白石晃士氏です。白石氏は今や有名な映画監督として知られていますね。
2012年リリースのかなり古い作品ではありますが、人気作としてシリーズ化され、劇場公開版まで作られています。Amazon Primeで視聴できることが判ったので観てみることにしました。
一応は1本の投稿映像がきっかけの体をしていますが、ほん呪とは異なり、一つの映像から取材を通して掘り下げるモキュメンタリードラマとなっており、完全なフィクションです。
以下の見出しは公式なものではなく、僕が勝手に付けたものです。
概要
投稿映像 ― 住宅街に現れた“口裂け女”
投稿者から寄せられた映像には、住宅街の電柱に向かって何事かを唱える不審な女の姿が映っていた。長い黒髪にトレンチコート、そして白いマスク。その風貌は、都市伝説「口裂け女」を彷彿とさせる。
女は撮影者に気づき、彼らに対する悪態を呟いた後、猛スピードで追走してきた。その異様な脚力に戦慄しながら、番組ディレクター・工藤仁は断言する。「これは現代に蘇った口裂け女に違いない。捕獲します」
アシスタントの市川美穂は戸惑いながらも、その無謀な計画に同行することとなる。
目撃証言と異様な貼り紙
投稿者の矢野明、北村一史にインタビュー。女の走力検証を行い、異常な速さが確認された。近隣への聞き込みでは複数の目撃証言が得られ、さらに男への恨みを綴ったとみられる意味不明な貼り紙も発見される。
目撃情報から、女はホームレスではないかとの仮説が浮上する。
公園のホームレスと“不気味なお守り”
近くの公園でホームレス男性に取材。女は一時期この公園で生活しており、髪の毛を編んだ奇妙な物を「お守り」と称して配っていたという。その造形は、例の貼り紙の一部と酷似していた。
また、女と揉めて刃物で怪我をした者がいること。その揉めたホームレスは後に自殺し、女と接触を持った者も3人死亡していること。取材対象のホームレス自身も、そのお守りを所持していた。
工藤は強引な手法で証言を引き出し、事態の異様さはさらに深まっていく。
呪術物の正体
新たな貼り紙が出現したとの連絡が投稿者から入る。その際、実際の女の姿も目撃されていた。
工藤は、この“お守り”が呪術的なものではないかと睨み、専門家に話を聞く。鑑定の結果、それは特定の流派に属する呪術物であり、編み方は極めて正確。知る者はごく少数で、関係者以外には作れないという。その用途は「異界の鬼を呼び寄せるもの」。
工藤らスタッフはその流派の継承者へと接触を図る。
流派継承者・犬井との対面
山間の集落に住む呪術者・犬井に取材。他に継承者はいるかとの問いに「いない」と断言。例の女の写真を見せても「知らない」とそっけない態度をとる。
若干の圧を伴って詰問する工藤。すると犬井は突如、工藤の幼少期を霊視し、両親が通り魔に刺殺された事実を言い当てる。犯人は未だ捕まっていない。
だが工藤は、いつの間にか調べ上げた滝御砂子(たきみさこ)という女性の名を出す。犬井の弟は変死しており、滝御砂子との色恋沙汰が原因で呪い殺されたとの噂があった。
犬井は激昂。「格下の滝にそんな力はない。弟に付きまとったので、呪いをかけて村から追い出しただけだ」。だが写真の女が滝御砂子であることは、暗に認めた。
そして断言する――「あの髪の呪術物を持っていると死ぬ」
仏間に立つ女
報酬をちらつかせ、滝御砂子の居場所を占わせると、犬井は激しく苦しみ出す。外の犬が狂ったように吠え、仏間の奥にあの女の姿が映り込む。現場は一時パニックに陥る。
犬井は「彼女はあちらとこちらの間(はざま)にいる」と告げるが、その後は感極まったのか要領を得ない。田代は苛立ちを隠さず現場を後にする。
呪術物と死
あのホームレスがやばいので東京に戻り、公園を探すが場所を移したようだ。
駅の反対側の公園に当たりをつけて向かうと、道端で彼を発見する。だが駆け寄ろうとした瞬間、彼は目の前で車にはねられ死亡。ひき逃げだった。
血だまりの傍らには、外れた例の呪術物。これは一瞬動いていたようにも見えた。さらにその際の映像には、背後に立つあの女の姿も確認できた。
投稿者宅での接触
その後、投稿者宅のドアが夜中に激しく叩かれる怪異の発生が報告される。隠しカメラに映ったのは、やはりあの女だった。
工藤は投稿者に協力を依頼し、張り込みを開始。6日目、女が現れる。
メモに書かれた言葉で語りかける矢野。
「あなた、みさこさんですか」
「自分は犬井です」
「お腹の僕の子はどうしたの?」
女は妊娠したまま疾走していたという。これを聞き女が呪文を唱えると、北村が激痛に苦しみだした。電話越しに異変を察した工藤はクラクションで威嚇。刃物を持つ女に対し、何を思ったのか衝動的に車で突っ込む。しかし女は無傷。マスクが外れたその顔、たしかに口が裂けている。やはりこの女は現代に蘇った口裂け女だったのだ。走り去った女を金属バットを手に追う工藤だが、その姿は消えてしまった。
消失と六つの呪術物
やがて女はこの一帯から姿を消し、投稿者・矢野も失踪してしまう。北村を伴い彼の部屋に入ると、六つの呪術物が渦を描くように整然と並んでいた。
工藤はそれを回収する。立ち去り際、浴室に映る異様な人影が映り込んでいた。トレンチコート姿。だが首から上が歪み、変形した不気味な存在であった。
物語は、そこから先を映していない。
感想
まず、ディレクター・工藤の強烈なキャラクターに度肝を抜かれます。インタビューでは最初こそ敬語ですが、次第にタメ口に変わっていく。時代を反映してか、事務所には灰皿が置かれ、煙草をスパスパと吸う姿も印象的です。逃げ出そうとしたホームレスには手荒な対応も辞さず、犬井に対しては「そんなわけないだろ」的な威圧的な物言い。占いの結果について核心を語らない犬井に「御砂子はどこだ、言えよ!」と詰め寄る場面もあり、アシスタントの問題提起にもスーパーパワハラで返すなど、かなり荒っぽいディレクターです。心霊ドキュメンタリーで、ここまでガラの悪い人物は初めて見ました(笑)。
その一方で、ホームレスにはまず千円を渡し、有力な情報にはさらに二千円を上乗せするなど金払いは良い。犬井の占いにもきちんと報酬を提示し(指を五本立てていましたが、五万円でしょうか五十万円でしょうか)、協力してくれた投稿者にも謝礼を渡しているようですし、アシスタントたちの給料もきちんと制作コストに含めていたりとキップの良さも感じられ、良くも悪くも人間くさい人物像です。
怪異の表現はやや控えめな印象もあり、序盤は「今さら口裂け女?」と半ば侮るような気持ちで見ていました。しかし、女が猛スピードで追いかけてくる場面には程よいスピード感と緊迫感があり、犬井が実際に嘔吐するシーンや、ホームレスが轢かれた後の血だまりの描写など、随所に妙な生々しさも感じます。
特に、あの呪術物のリアルで不気味な造形が効いています。気持ち悪さがじわじわと恐怖へ転化していく演出は巧みです。また、工藤の過去にも何らかの伏線がありそうで、その点も気になります。
ツッコミどころも少なくありません。矢野さんのアパートでは外廊下側で待ち構えればよかったのではないか、とか、滝御砂子の名前や犬井の弟との関係、妊娠の件などをいつの間に調べたのか、といった疑問。また、元陸上部の投稿者より速い相手をどうやって捕まえるつもりだったのか、という点も気になります(市川さんのこのツッコミで激昂してましたw)。
そして最大のツッコミどころは、あれほど足が速いはずの口裂け女から、投稿者たちが結局逃げ切っている点でしょう(笑)。
最後の映像は暗く荒れていて少し分かりづらいのですが、パッケージを見るとその全容が判明します。それを踏まえて見直すと、さらに恐怖が増します。全体としては恐怖度はやや控えめと感じていましたが、ラストのこの映像はかなり怖かったですね。
ちなみに、スタッフロールでは登場人物の人名が役名であることが示されており、そこで本作が完全なフィクションであると分かります。もっとも、最初から実話だとは思っていませんでしたけどね。さらにカメラ役で顔を出さず、声だけの出演の田代正嗣氏は、監督の白石晃士氏その人でした。
非常に面白かったので、このままシリーズを視聴し続けたいと思いました。
では。
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