はじめに
「闇動画12」のレビューです。今回から箸休め的エピソード無しの、中長編3本構成となり、なんか雰囲気が変わった感じがします。また今まで登場していた長田さんが今回は登場せず、演出補的な役割でインタビューを行う男性スタッフが初登場します。
いすのおじさん(怖い)
概要
テレビ局に匿名で送り付けられた映像。
雑居ビルのような廃墟を探検する若い男性3人組。異様な音が聞こえたので探りに行くのだが、その途中で撮影者が不気味な椅子を見つけてしまう。その椅子は目を離した隙に消えてしまうが、まるで後をついてきているように再び姿を現し、またすぐに消えてしまうし、他の2人はそのことを信じてくれない。
音のする場所を探って店のような部屋に入ると、天井から首吊りロープがぶら下がっていた。奥は行き止まりで、上から聞こえてきたはずの音が、今度は下から聞こえていることに気が付いたところで、それは止んでしまう。
店の中央に戻ると、さっきまでなかったはずのあの椅子が、首吊りロープの真下に置いてある。「さっきの椅子だ」と撮影者は訴える。だが撮影者と残り2人とで、ここに来ていない別の友人と共謀した悪戯である、と互いに思い込み、彼らは威勢を取り戻す。そして悪ノリで、メンバーの1人がこの椅子に座ることになった。
座った男性はすぐに放心してしまい、何を思ったのか、ぶら下がっていたロープで自ら首を吊ってしまう。すぐにロープを外し、ぐったりとした仲間を担いで脱出する彼らの前に、あの椅子とその傍らに立つ、謎の黒装束の男が道を塞いでいるではないか。恐怖から慌ててあっちこっちへと逃げ惑う彼らなのだが、その先に待っていたものは……。
映像提供者によると送り付けられた映像にはメモが添付されており、そこには
「わたしのいすかいませんか?」
「いすのおじさんより」
と記されていたそうである。
感想
まずですね、椅子が怖いんです。何この椅子。なんか人間の骨でできるみたいだし、座面には長い髪の毛みたいなものが敷いてあるし、実に気味が悪いですね。なんか元ネタのモチーフがありそうですが、思い当たりません。こんなものが行く先々で現れては消えたり、とかしたらその時点で逃げ出したくなりますね。
一方、椅子の傍らの自称「おじさん」はそんなに怖くないです。黒装束なんですが、仮面をして表情が伺えず、なんかマジシャンっぽい。ただ気味の悪い椅子、友人がおかしくなって自ら首を括った、早く逃げなきゃ、と言う状況で、こんなのに出くわすのは怖いですね。
迷路みたいな狭い通路、階段という状況も加味されて面白かったですね。
この時点で新演出補の男性がインタビュアーとして登場しますが、斜め後ろ姿で顔が良くわかりません。
黒い人(怖い)
概要
某大学の大学院生が、研究室の前任の教授が持っていたという映像を提供してくれた。精神に問題を抱える患者が、自分の近況を何らかの形で残し、自分を客観的に見つめることで安定を取り戻す「日記療法」の一環として記録した映像であるらしい。この患者の男性は交通事故で瀕死の状態になり、精神が不安定になってしまった。治療的には良い方向に向かっていたのだが、ある日を境におかしな夢を見るようになった、とカメラに訴える。
それは事故の光景で、後部座席にいた彼が、車の横に同じ速度で走る黒い人影を目撃してから事故った事、一緒に事故に遭い亡くなった友人達に、その黒い影が友人らの口から出る白い靄を吸っていた事、そして最後に自分に向かってきた黒い影が、舌打ちをして去ってしまったという事を語る。
それでも家から出ることもできず閉じこもっていた彼が、窓の外を撮影するようになるまで快方に向かっていたように見えた。だが夜に撮影したその映像に、彼が言っていた黒い人影が姿を現してしまう。黒い影が家の中まで入ってきた、と語る彼の映像には……。
感想
外を写した映像に黒い影がひゅっと横切るんですよ。ようやく精神も明るくなって快方に向かってきた矢先に出てくるのは怖いですね。ひゅっと横切った後に「やあ来たよ」って感じで改めて姿を現すのでちょっとびっくりします。
部屋にも現れてカメラのすぐ近くに現れるときに、今までシルエットだったこの黒い人影の、瞳がじっと見つめているのが怖いですね。死神のようなものだったのでしょうか。
ここで新演出補の男性の横顔が分かります。切れ長の目が谷口猛氏に似ているような気がしますが、自信はありません。闇動画はスタッフロールや、スタッフの情報が何も無いのでわからないんですよね。
事故物件(怖い)
概要
テレビ番組の制作会社が、入居者が数日で退去してしまう「事故物件」を取り扱うことになり、候補に挙がった部屋でタレントに参加してもらう前に、女性AD2人に3日程泊まり込んでもらい、下調べを行うことになった。
ディレクターの山田は「よろしくね!」と検証を彼女たちに任せ、早々に帰社してしまう。
1日目に、徹夜明けの彼女らはいきなり夕方まで爆睡してしまったり、この部屋を見上げて花を手向けて拝んでいる初老の男性を目撃したりと、ちょっとおかしな現象が発生する。この男性はADの問いには何も答えず、逃げるように立ち去ってしまう。この部屋で何があったのだろうか。
その後開け放したはずのドアがひとりでに閉まったり、奥の部屋から音がしたり、次の日も夕方まで爆睡してしまったり、窓に無数の手形がついたり、外から撮影した窓に謎の女性を撮影してしまったり、といった怪現象が続き、彼女らの関係も次第に険悪になっていく。
挙句の果てには奥の部屋のクローゼットから激しい物音が響きわたり、クローゼットを開けようとすると、それに呼応するように物音が激しさを増す、と言った恐怖現象まで発生する。定点カメラにはクローゼットの反対側から、壁をすり抜ける女性の幽霊も記録されてしまった。彼女らはプロデューサーの山田に「来てくれ」と電話をするが、彼女らはまた爆睡してしまい、今度はまさかの23時。こんな時にも爆睡して、昼がほとんどない状態は、まるで時間が勝手に進んでしまったようである。
とうとうADの一人が我慢しきれなくなり、この部屋を出ていこうとしたところ、部屋の照明が落ちてしまい、洗面所のガラスが割れる音が鳴り響く。もう一人のADが撮影したカメラの前に現れた、恐ろしいものの姿とは……。
山田が駆け付けた頃には、AD二人は気を失って倒れていた。奇妙なことに、山田はADからの「来てくれ」と言う電話は受けていないのだそうだ。それどころか、彼は毎日「撮影は順調」との連絡を受けていたのだという。山田はその後交通事故で他界。AD2人は仕事を辞め地元に帰ってしまった。
感想
AD同士が互いに仕込んでいるだろ、と疑心暗鬼になるあたりが、「いすのおじさん」に似ていますね。夜の怪現象に怯え、よく眠れなかった次の日に起きたらもう夕方で、時間が飛んでしまうような感覚が、異世界に迷い込んだようで雰囲気があります。最後の日なんか起きたら既に深夜で、慄然とする状況は面白いと思いました。花を手向けた老人が無言で立ち去ってしまったのも、想像が膨らみます。
クローゼットの怪音ですが、ただでさえ結構大きな物音が、開けようとしたとたんにあり得ないくらいに大きくなるのが結構怖かったです。
最後にまさに王道の幽霊本体が出てきますが、慣れていない人にはかなり怖いと思いますね。
個人的には、彼女らが「やべえ」と思ったあの最終日の夕方に、とりあえずこの部屋を出てファミレスとかに避難すればよかったのにと思いましたね。そこから山田氏に電話すればよかったんですよ。「おまえ毎日順調です、って電話くれてたじゃんか」って言われて戦慄していましたよ、きっと。
感想まとめ
今回は骨太のエピソード3本に集約されて、合間の隙間エピソードが無く、シンプルで良かったと思います。1本が長いとダレそうですが、意外と展開はスピーディーで飽きさせませんでした。怖さも中々のもので、展開が進むにつれて盛り上がっていきます。臨場感もあって、今までで一番良かったんじゃないかと思いますね。
ただ、黄金期の「ほん呪」のような「これって本物の心霊現象かも」と言う怖さはありません。あくまでもホラー映画を見ているような怖さで、フィクションと割り切れる方は楽しめると思います。
次が楽しみになってきました。
では。
コメント
どうでもいいですけど、この黒い人のビデオの男性、松本人志を若くしたような感じでちょっと笑ってしまいましたw
雰囲気もそんな感じで(笑)
あああッ
なんか似てますねw
前回のヘビがあれだったので警戒してましたが、
今回はなかなか面白かった印象です。
特にいすのおじさんで出てきた椅子のデザインが秀逸でした。
個人的に短編を間に挟まれるより中、長尺のエピソードを2、3個の方が集中できるので好みの巻です。
あ、ヘビ前回じゃなかった!
(笑)。
あの椅子気持ち悪いですよね(笑)。