心霊玉手匣 constellation(ネタバレあり)

レビュー
心霊玉手匣 constellation
あの傑作シリーズが帰って来た!最新作にして完結編!時空を超えた恐怖があなたを襲う!

はじめに

「心霊玉手匣 constellation」のレビューです。ええと、なんといったら良いのか。まあ普通のドラマというか映画ですね。

さて、ここに来て「ほん呪」フォーマットでレビューをしてしまったことを後悔しています。概要が、ただ物語をなぞっているだけになってしまっていますからね。とは言え、今までそれで書いてしまっているのでやめるわけにいかず…と言うわけで、ここから長いあらすじが続きますが、作中のツッコミどころはその中に含めておきましたので、おヒマな方はどうぞ。

また、タイトルにも書いていますが、ネタバレオンパレードですのでご注意を。尚、この作品は本編にはっきりとしたサブタイトルらしきものはありません。それぞれの見出しは、DVDのチャプターのタイトルからです。

概要

星の配列

街中に貼られた人探しのポスター。年月がかなり経ってしまったのかかなり古びている。探し人の名は「小笠原奈緒」。写真の彼女はモロちゃんこと両角奈緒そっくりである。

暗い表情の両角奈緒(小笠原まりあ)は手に花束を持ち、チーム玉手匣を引き連れてあの居合川の河原を訪れている。その場所はかつてモロちゃんの母親(小笠原奈緒)が忽然と消えてしまった現場である。しきりに彼女を元気付けようとはしゃぐ上園であったが、モロちゃんの表情は冴えない。彼女が河原に花束を供えると、どこからともなくあの「終末の音」が辺りに鳴り響く。

スマホで場所を検索しているモロちゃんを撮影しつつ、彼女の後を金魚の糞みたいにくっついて歩き、撮影している唐沢の視点に切り替わる。かつてレンタル彼女でデートした際の思い出話などを交えつつ、彼女の気を引こうとしている(?)唐沢にモロちゃんは完全塩対応。これまでのエピソードが唐沢の語りでダイジェストされる。モロちゃんと唐沢は目的地の雑居ビルに到着したが、彼女はカメラを持つ唐沢に、外で待つように指示し、階段の奥に消えていく。

血の日曜日

場面は変わり、「心霊玉手匣4」を視聴する女性2人。そこに夫らしき坊主頭の男(以降ヒデちゃん)が帰宅する。しばらくは妻の友人を歓迎しつつ、和やかな雰囲気を醸し出すが、画面に映る「両角奈緒」の姿を認めると「まりあ」と一言つぶやき、頭を抱えて苦しみだす。奥のカウンターキッチンの白い壁には女性の顔のようなものが浮かびあがっていた。急に落ち着きを取り戻した彼は立ち上がり、今までの態度が豹変し、「ここはどこだ」と呟くと、リビングにあった木刀を拾い上げて部屋を飛び出してしまう。

チーム玉手匣事務所では投稿者、英(はなぶさ)咲季さんの相談を受けていた。デート中、元カノとの黒歴史をうっかり話題にしてしまった迂闊な彼氏と喧嘩になりかけたところ、その彼の上にどこからともなく大量の石が降ってきたというものであった。これは世界中で稀に発生する「ファフロツキーズ」という現象ではないかというのである。そこで彼女が思い当たる件として去年(劇中2016年)11月14日に発生した3000人にも及ぶ大量殺人事件、「血の月曜日」事件を切り出す(架空の事件ですよ)。この事件の被害者が全員撲殺されていたことから、英さんは自分が体験したことと少し似ている(?)のではないかと怖くなり、相談に来たのであった。

捜索

すると話の途中で木刀を持ったさっきの「ヒデちゃん」が、「まりあはどこだ?」と叫びながら事務所に乗り込んでくる。「お前誰やねん」と、ヒデちゃんと揉める上園とのやりとりから、モロちゃんの源氏名「両角奈緒」は、母親の旧姓と名前であることがわかる。ヒデちゃんは乱暴な口調ではあるが、彼女が今危険で、やばい状況であるということ、彼女の元に急いで向かいたい旨を木刀を片手に訴える。岩澤は彼の態度にただならぬものを感じ取ったのか、車でモロちゃんの元に急ぐことを了承、なぜか無関係なはずの英さんも、なし崩しに同行させられてしまう。

実はモロちゃんは母親の失踪の手がかりを探すため、報道記者を名乗る田鎖という男の元を訪れていたのであった。小笠原奈緒は近所に住んでいる男、野島敦史の自宅へ回覧板を届けに行ったきり帰ってこなかった。当時失踪事件に関わっているのではないかと疑われた野島は、最近になって自殺していた。田鎖によると、自殺した野島の自宅から1本のカセットテープが発見され、そこには野島本人の肉声により事件に関するあらましが記録されているという。田鎖は独自のルートでそのテープを入手したそうで、それを聞かせたいので今から遺愛町に一緒に来てくれないかと言う。胡散臭いその男との会話で、彼女は彼が何者かに取り憑かれていることを看破してしまう。

一方車の中では英さんの相談の続きを行なっていた。上園の何か他に思い当たることはないかとの問いに彼女は顔と髪が薄い男性につきまとわれたことを語る。その男は報道記者の田鎖を名乗っていた。それはまさに今、モロちゃんが会っている田鎖と同名である。不穏な予感を感じた上園はスマホにインストールしてある人工知能、「ミナ」に唐沢に電話をかけるように命じる。どうやらこの人工知能「ミナ」は世界中に普及し、認知されているようである。

モロちゃんを心配する唐沢は、外で待っているように言われたにも関わらず、田鎖の事務所前まで侵入していた。中ではモロちゃんと田鎖がもめている様子。急いで部屋に侵入する唐沢だが、この男の神通力のような力で、モロちゃんも唐沢も床に倒されてしまう。田鎖はそれがきっかけで憑き物が落ちたように正気を取り戻した。モロちゃんはこの場にいるのは危険だと感じ、雑居ビルから脱出。唐沢も後を追うが、何が起きているのかわからずにキョドっている田鎖を連れ、街中をあてもなく逃げ惑うのであった。

田鎖を操っていたのは得体の知れない生き霊であった。上園からの電話をとったモロちゃんはその生き霊の本体は遺愛町にいるはずなので探して欲しい、こちらはなんとか逃げ切ると伝える。切迫した状況だが手がかりも何もないので途方にくれる上園達だが、とりあえず遺愛町に向かうこととなる。

超能力者たち

車の中でどうして田鎖がモロちゃんと英さんに近づいたのか議論をしている最中にヒデちゃんが英さんを見つめ、彼女に能力があり例のファフロツキーズ現象はその能力が無意識に暴走していると断言する。岩澤が能力の獲得にはなにかきっかけがあるのではないかと指摘すると、英さんはその以前にネットにあった「ダズル動画」を見たことがあり、その時に気を失ってしまったと言うことがわかる。

ダズル動画とはネット上に広まる恐怖動画の通称で、錯視効果を用いた、なんだか幾何学的な図形だとか、怖い顔だとかが明滅したり、繰り返されたりするキモい動画で、見ると錯乱する、呪われるとか言われているもの(らしい)。

上園はこの1年でそのダズル動画を見たと言う投稿者が2人いたことを思い出す。中国拳法家のチェンさんは棒の先からビームのような光線を出す能力を獲得。探偵物語の松田優作みたいなやつにいじめられていた串岡亘さんは周囲の霊体を操り、相手の動きを封じる力を獲得していた。いずれも能力の覚醒前にネット上でダズル動画を見ていたのである。

ヒデちゃんはその動画が鍵となり、眠っていた能力が呼び覚まされたのであろうという見解を示す。彼は「多分誰かが裏で糸を引いている」と臆面もなく語る。あの「血の月曜日」事件も能力者の無意識の暴走なのであろうか。関連性を見出した上園は、チェン、串岡さんに連絡を試みるが2人とも行方不明であった。

その場所へ

上園は「心霊玉手匣3、4」で活躍した念写能力者、「岡崎律」にも連絡してみるが、彼も行方不明になっていた。止むを得ず彼の心の友、金田さんに連絡すると、彼も岡崎さんを探していると言う。金田さんによるとテレビ局の取材と言う名目で遺愛町で取材を受けると直前に語っていたそうである。そして岡崎さんもこのダズル動画を見ていたことがわかった。彼もまた、この動画で能力を覚醒させたのであろうか。上園達は金田さんと合流すべく遺愛町に急ぐ。

モロちゃん達はとりあえず何かのビルの地下へ続く階段の入り口近くに身を隠す。霊体相手に物理的に隠れても意味ないんじゃね?と視聴者は疑念を感じ得ないが、ようやくほっと一息つくことができた。この逃走劇でiPhoneの画面が割れてしまった唐沢は上園から遺愛町に向かっており、合流するようにとの電話を受ける。ここでも遺愛町。彼の地に何があるのだろうか。その時地下への突き当たりに女性の顔が浮かび上がった。それは行方不明になった小笠原奈緒、モロちゃんの母親の姿であった。

上園達と合流すべくモロちゃん一行はレンタカーで遺愛町を目指す。運転を買って出た田鎖さんは、事の経緯を車の中で話してくれた。彼は小笠原奈緒失踪事件の関係者と目されていた野島を、ずっと追いかけてた。そして、とある公園で野島が正体不明の若い男と会っている場面に出くわす。その光景を盗撮していた田鎖さんだが、野島がこちらに気がついたように視線を向けた瞬間、彼から別の顔のようなものが飛び出し、カメラに向かってきたのだ。そこからの記憶が田鎖さんには無いと言う。野島さんはこの映像が撮られた一週間後に自殺してしまっていた。そして田鎖さんは「これは君が持つべきものじゃないかな」と、モロちゃんにカセットテープを渡す。野島敦史が自殺した後に、部屋に残されていたと言うカセットテープは実在していたのだ。

だがその後再び田鎖さんは何者かに取り憑かれてしまう。「そんなに俺たちの正体が知りたいか」、「なら教えてやろう、わーはっはっはっ」そう高らかに笑う田鎖の運転で車は遺愛町を目指す。

その頃、上園達は遺愛町のすぐ近くまで来ていた。英さんは例の映像の撮影された、恋人の大学の近くだと言うことを驚いたような口調で説明する。なんと言う奇遇でなのであろうか。少しして上園一行は金田さんと合流する。すると岩澤、金田さん両名が持っているビデオカメラに、何やら別の風景の映像が唐突に差し込まれる。映像は断続的であったが、そのパターンはモールス信号のSOSのようであった。船舶免許を持っている金田さんはそのパターンにすぐ気がつく。そして、その映像にモロちゃんや唐沢の姿もあった。あてもなく車を走らせるが、映像に映る建物が都合よくすぐに見つかり、そこに乗り込む一行であった。

サードステージ

建物は割と新しめであるが今は使われていない模様。なんだかわからないが、先程の映像の断片から、階段をわちゃわちゃ騒ぎながら上へ上がっていく一行。途中ヒデちゃんが見えない相手と木刀で戦ったり、上園が何かに突き飛ばされたりと、本当にどったんばったんの大騒ぎで、スマホの人工知能ミナちゃんの指示でたどり着いたのは最上階の機械室みたいなところであった。そこにはモロちゃんと唐沢もおり、やっとチーム玉手匣が合流できる。ちなみに田鎖はモロちゃんのお守りで正気を取り戻していた。

全員集合といった感じではあるが、休む間も無く敵の見えない死なない程度の謎の攻撃が彼らを襲う。人工知能「ミナ」も影響を受けたのかバグって役に立たない。ヒデちゃんは「お前らは本体を探せ、ここは俺が引き受ける」とその見えない敵の前に立ちふさがり、木刀で攻撃を受け止める。一行はヒデちゃん、英さん、田鎖をその場に残し、何かを感じたモロちゃんに先導され地下に向かう。

地下には岡崎さん、チェンさん、串岡さんが横たわっており、頭に何か植物の蔓のようなものに繋がれていた。何者かは彼らの能力を使い、3人の合体生き霊を作り上げていたのだ。金田さんが「俺の親友を返せぇ」とか叫びながら、この蔓を強引に取り外したおかげで3人は無事意識を取り戻す。攻撃が止んだのでヒデちゃん達も地下に駆けつけてきた。

ここで若い男が「おみごと」とか言いながら姿を表す。「サードステージ!」とか言うセリフで上園はピンとくる。そう彼こそがラスボス、自称超能力者、「ツッチー」こと土保弘人であった。彼に転生されたおかげで押切さんは行方不明になってしまったのである。それを責める上園に「君のスマホにいるじゃないか」と言い放つ土保。量子コンピュータ技術により押切さんの魂を人工知能として蘇らせ、いまや世界中の人たちが「ミナ」を使っている。その結果押切は永遠の命を獲得したと抜かすではないか。これも土保の仕業なのか。

彼によると、過去の様々な人間に転生し、様々な人生を歩むうちに人類はこの世界の害悪でしかないと感じ、超能力が使える人々を集め、人類を抹殺しようと企んでいると言い放った。なお、16年前野島敦史にも転生したと取ってつけたようにも語る。小笠原奈緒の失踪にも彼が絡んでいるのか。ダズル動画も、能力者を覚醒させるために彼が作ったもので、まさに全ての元凶であることがわかる。また、今の若い男の肉体はチーム玉手匣が救う事のできなかった貫井さんの兄のものであることがわかる、というかご丁寧に説明してくれる。貫井さんはあの後、病院を抜け出し自殺していたのである。貫井兄はその件でチーム玉手匣を逆恨みしていたので、土保に喜んで協力したという。なんと言う兄弟愛。なら、あの時に真っ先に駆けつけて守ってやれ良かったじゃないか、◯鹿なの?◯ぬの?、あっ、死んでるか(笑)。

「お前達の大事なものを奪う」そう言って貫井兄…じゃなかった土保はモロちゃんに向かって何か強力そうな、でも視聴者には何も見えない、なんだかよくわからない「ビシュ!」とした攻撃を加える。だが、とっさにモロちゃんをかばい、それを受けたのは木刀を持ったあのおっさん、ヒロちゃんであった。その攻撃で彼はその場に昏倒してしまう。そして岡崎の念写能力で「回覧板を届けに来た近所の主婦」としか思えない、ラフなニットにジーンズ姿の女性(ていうか、モロちゃんのお母さんの小笠原奈緒の姿)が天に召されていく姿が映し出される。

「くそ!」モロちゃんへの攻撃を阻まれてしまった貫井兄の姿をした土保は攻撃の第2弾を繰り出そうとするが、逆に英、串岡、チェンの能力による攻撃を食らってしまう……っていうか彼らの能力覚醒させたのお前だよね、うわマヌケ。土保は「俺は何度でも復活するぞ」と三流漫画の悪役みたいな捨て台詞とともに、頭が煎りたてのポップコーンみたいに弾け飛び、ピーナッツを取り出した後の落花生の殻みたいになって倒れ込んだ……って死んだのかな?

母の魂

「おかあさん」そう呟くとモロちゃんは天に召されたお母さんの霊体を追いかける。ん?天に召されたんだよね。その辺にはもういないよね。すると岡崎の能力は小笠原奈緒の視点と思しき映像を念写し始める。

小笠原奈緒の霊体は天に召されたと思ったのだが(私は)、映像によると、なぜかその辺の道路を高速移動しているらしい。だが次第に映像は途切れ途切れになってしまう。霊体がヒデちゃんからどんどん離れていっているためらしい。映像で場所を特定して魂を捕まえるため、その近くのビデオカメラをオンにする必要がある。すると、土保が消えたことで機能を取り戻した人工知能ミナから「SNSで世界中のカメラをオンにしてもらうよう呼びかければよくね?」との提案がある。上園はミナに拡散を依頼。田鎖もかつてのツテからテレビ関係者にカメラをオンにしてもらうよう依頼、この過程で彼が局をやめてフリーになっていたことがわかる。どうやら土保に操られていた時に勝手に退職してしまっていたらしい(笑)。高給である大手テレビ局を勝手に退職されて嘆きまくる田鎖さん(笑)。退職金はちゃんと振り込まれていたのだろうか。

3人の能力者と1人の心の友(笑)は一致団結して岡崎にパワーを送り込み、その能力を増幅させる。そのパワーによって世界中(実際にはその辺の3〜4台となぜか唐突にNASA?の宇宙ステーション内)のカメラが小笠原奈緒の霊体を追うが、努力もむなしく結局宇宙まで行っちゃいましたとさ(やっぱり天に召されたのか)。

それらの断片的な映像は後日、チーム玉手匣に集められた。一般人、報道関係者、宇宙事業関係者と多岐にわたるその映像は小笠原奈緒の魂の軌跡であった。そしてこの映像に加えて、野島敦史が残した音声が紹介される。

あの時、回覧板を届けに来た小笠原奈緒が突然何かに驚いて走り出した。ただ事ではない雰囲気を感じ取った野島は後を追う。たどり着いたのは居合川の河原。対岸には学生らしき4、5人の若者達がいたが、その中の女性の1人が錯乱状態であった(萱沼さん達ですね)。そこ光景を見ていた小笠原奈緒は「まりあが危ない」と呟くと、目の前に大きな光の玉が現れた。彼女は「娘を助けにいく」と野島に伝えるとその光にためらうことなく飛び込んで行ってしまった。そこには彼女のストールと黄色い巾着袋だけが残されていた。ここまで語った野島の音声は苦しそうなうめき声をあげて、音声は終了してしまう。この時に土保に転生され、薄れいく意識の中で最後に残したメッセージだったのであろうか(この時に完全に野島を乗っ取ったツッチーは目の前のテープ消しちゃえばよかったのにね)。

一瞬会えたと思ったのに結局母はまた遠くに行ってしまった。建物の屋上で呆然と空を見上げるモロちゃん。自分たちではどうすることもできない無力感から上園に食ってかかる唐沢。「俺だって一生懸命やってるんや!」そう言う上園も唐沢と同じ気持ちであっただろう。「今そんなことを言っている場合じゃないだろう!」そう言いながらも冷静にカメラを回し続ける鬼畜な岩澤であった。

使命

木刀を持ってチーム玉手匣事務所に押し入った物騒な男、そしてモロちゃんを救ったヒデちゃんは興梠(こおろぎ)秀雄と言う名前であった。彼はこの日まで妻の由美さんと幸せに暮らしていたが、実は彼は20年ほど前に記憶を失ってしまっていた状態で発見されていたと言う。そのため身元もわからない状態だったが、当時民生委員であった由美さんの両親が彼の更生の手伝いをしていたことが縁で、由美さんと知り合ったそうである。

チーム玉手匣の調べでは、彼が発見される1ヶ月ほど前に居合川で水死した男性の事故を探し当てる。この男性の遺体は病院の霊安室から忽然と姿を消していると言う事実があった。この男性の写真を由美さんに見せると、秀雄さんに間違いないとの証言を得る。

秀雄さんは生前、由美さんに助けなきゃならない人がいると語り、その時に備えて20年あまり、木刀で素振りをして鍛錬するのが日課だったそうである。この秀雄さんは娘を助けるために既に亡くなっている男性の肉体に転生した小笠原奈緒で、最後の最後に記憶を取り戻したとでも言うのだろうか。

だがそれまでの間、この夫婦は確かに愛し合っていた。それは興梠さん夫婦の日常の映像からひしひしと感じられる。

スタッフロールの後、土保を取り込んで転生させる能力を授けたあの「大いなる存在」とも言うべき、漆黒の球体ともブラックホールともつかないものが宇宙空間に浮かんでいる。画面は真っ白な光に包まれ、顔を覆っていた手を開いたような視点の映像となる。その左手の薬指には指輪が光っており、視線の先にはチーム玉手匣の面々が並ぶ。振り向いたモロちゃんが気がつき、今にも泣き出しそうな表情。視線の主は一言呟く。

「玉手匣やん」

これまでの「心霊玉手匣シリーズ」の全てのキャストのスタッフロールが流れ、作品は終わる。

感想

今までの事象が星座(constellation)のように一つの物語へとつながる…そんな作品です。居合川の上流で謎の光球に出会い、時空を超えて転生を繰り返す能力を得た土保が全ての始まり。ただチーム玉手匣に集った能力者が、それに力を合わせて立ち向かう、といった王道展開に胸が熱くなる…はずなのですが、残念ながら能力者の半分以上が今回登場の新キャラではちょっと感情移入する暇がありません。

それでも今回登場の英さんが、勢い余ったヒデちゃんに「ここはこうやって開けるんですよ」と車の電動ドアの開け閉めを説明したり、廃施設に乗り込む時にみんなとは一旦遅れてポーズをとったりとか、すっとぼけたキャラが面白かったですね。

また最初の語りでは胡散臭さプンプンだった田鎖さんが、正気に返った途端にオロオロしてたり、「髪が薄くて顔も貧相な田鎖が怪しい!要注意や!」と電話口に叫ぶ上園に「あ、それ僕です」とボケかましたりと、こちらも良いキャラだったと思います。

反面、ヒデちゃんこと興梠秀雄はモロちゃんのお母さんが転生したものだったのですが、それにしては言葉遣いも乱暴で、ただのおっさんにしか見えず、ちょっと違和感がありましたね。まあ、転生したことにより性別も超越してしまったと言うことなのでしょうが。由美さんが今でも彼を愛している感じが伝わり、彼女が可哀想でちょっとジンときてしまいました。

実はこの「心霊玉手匣」シリーズ、4卷でメーカーとしては打ち切りだったようです。コアなファンがいたものの一般にはあまり売れなかったようで、今回の「constellation」も岩澤氏が全資金を出した、いわゆる自主制作に近いものだったそうです。その為、本来なら一人一人の能力者の掘り下げたエピソードの卷を制作することができず、この卷に全てをぶち込んだせいか、どうしても駆け足ならざるを得ず、僕にとっては終始ワチャワチャした印象になってしまいました。

シリーズ全体としてはなかなかに面白かったのですが、いかんせんホラーとしてはほとんど怖くないのがかなり残念で、ちょっと惜しいと思います(しかも今回はちょっとSFっぽいし)。

最後にシリーズ全巻のキャストが出てくるのですが、1卷のボイストレーナーの役は川居さんだったのですね。あとスタッフロールに菊池氏の名前も見受けられました。

今度からこのようなドラマ形式のものは、あらすじをもちっと簡潔にしたいと思います(まあ、この作品の初っ端は、ほん呪っぽい形式に見せるミスリードがあったんですけど)。

2021年9月4日追記
最後、土保との決戦の場は「さしま環境センターごみ処理場跡地」ということが分かりました。

https://www.sakaimachi.co.jp/works/detail/?id=5

そう言えばスタッフロールに「いばらぎフィルムコミッション」の名がありましたね。まだ新しそうな施設でもったいないと思いますが、用途が無くなって廃墟です。今はロケ地等に利用されているのですね。

コメント

  1. みっつ より:

    えーと、自分は一同が車に乗り込んでまりあのもとへ向かうところまでは観たんですが
    「ヒデちゃん」のことは「謎のヤクザ」として記憶されてました(笑)。
    このレビューを頼りにGYAOでもう一度この作品を観てみようかとも考えていましたが、、難しそうです。
    (GYAOではなぜか心霊玉手匣ではこの巻のみがアップされています)

    このシリーズで度々出てくる「終末の音」現象ですが、自分も以前YouTubeでいくつか聞きました。
    「最後の審判」の時に天使がラッパを吹くことから、そのように呼ばれるのでしょうが
    思い返してみると、子供の頃にこんな現象に接したことがあったかもしれません。虚空にどこからともなく聞こえてくる正体不明の音が響き渡る記憶があるような。。
    ファフロツキー現象まで引っ張り出してきてますが、本編の中で意味あったんでしょうか?

    • itton より:

      みっつさんこんにちは

      >「ヒデちゃん」のことは「謎のヤクザ」として記憶されてました(笑)。

      私もパッケージ写真ではヤクザにしか見えなかったので、今までの世界観をぶっ壊すようなキャラに違和感がありましたね。で、本編を見てもガラが悪い。「早くいけよ馬鹿野郎!」とか、とてもモロちゃんのお母さんが転生した姿とは思えませんでした。そのギャップがサプライズになっているのでしょうけど。

      >正体不明の音が響き渡る

      「終末の音」聞いたんですか!
      Youtubeに上がっている「終末の音」はとても怖いです。
      なにか科学的で合理的な説明があるのですかね。とてもこの世のものとは思えないのですけれども。

      >ファフロツキー現象
      >本編の中で意味あったんでしょうか?

      土保をやっつける為の武器です(笑)。
      1回しか使いませんけど。

      それにしてもこの作品、土保(つちやす)とか英(はなぶさ)とか田鎖(たぐさり)とか興梠(こうろぎ)とか萱沼(かやぬま)とか微妙に珍しい苗字が多かったですね。何か意味があるのでしょうか。

      もうすぐ「ほん呪90」ですけど、その後は一体何を見たら良いのか思案中です。
      では。

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