はじめに
「心霊盂蘭盆9」のレビューです。前巻を久々に観て盂蘭盆らしい派手な演出を十二分に堪能できましたが、今回はどうでしょうか。因みに前巻で死にそうな咳をしていた監督の松本さんは、華麗に復帰しているようです。
覗き女(少し怖い)
概要
投稿者は声優養成所に通う赤井麻耶さん。養成所で知り合った田城佳苗さんとともに同人ドラマCDを作成していたが、その特典映像の撮影で怪談話を収録することになった。その際に不思議な現象が起こる。
田城さんの定番コテコテの怪談の後、部屋中に謎の悲鳴のような怪音が響き渡る。玄関から外を伺うも特に怪しいものはない。だが、玄関には見覚えのない容器が転がっており、それを蹴飛ばしてしまった。蓋を開けてみると白い固形物が入っている。手に取ったしまった田城さんだが、赤井さんはそれが骨壺であることに気がつく。田城さんは気味の悪さと不快感から、触ってしまった手を洗いに慌てて流しへと走る。
なぜこんなところに中身の入った骨壺があるのか。わけの分からなさに困惑する彼女らであったが、田城さんとその周りに異変が起こる。
感想(ネタバレ)
まず撮影していた赤井さんが田城さんの後ろに怖い女性の顔を見つけ短い悲鳴を上げます。これ、そこそこ怖いと言うかグロっぽい、このシリーズ定番の派手な幽霊です。
これはすぐに消えてしまいますが、田城さんが咳き込んで流しで血を吐いてしまいます。そして呆然としてこちらを向く彼女のお腹付近から、チャックを開けるように手が出てきて、そこから女の顔が「こんにちは」します。「なんじゃこりゃ」と思う間もなく田城さんは黒っぽいスカートの裏地丸出しで倒れ込んでしまい、映像は終了。
この骨壺はどうも人間用としては小さいですね。おそらくはペット用、犬なら小型犬サイズだと思います。最近犬2匹を亡くしましたので、見知っております(涙涙涙涙)。
田城さんは命に別状なかったそうですが、その後養成所を辞め、連絡を絶ってしまい姿を消してしまったそうで、今はどこでどうしているか不明だそうです。
骨壺はどこか適当な河原に埋めてしまったそうで、スタッフは赤井さんとともに埋めたとされる場所を捜索。その近辺から骨壺らしきものを掘り当てますが、中に骨はなく、カセットから引き出されてぐちゃぐちゃになったビデオテープが入っていました。
最初に田城さんの後ろに出てくる女は程よく派手でなかなか良いです。ただお腹(いや胸か)を割って出てくる女はちょっと蛇足だったかなと思いました。別の意味で派手といえば派手なんですけど、ちょっとね。
せっかく埋めた骨壺を掘り出しに行くシーンも蛇足気味だと、ここでは思いました。後にこの場所、もう一度出てきます。せっかくテープ見つけたのにこれを解析しないのかよ、とも思いましたが、これも後のお楽しみです。
幽霊正体枯尾花(怖い)
概要
投稿者は若い女性、山尾清美さん。映像は去年脳出血で亡くなった兄、稔さんの遺品の携帯に録画されていたものだそうだ。
山尾稔さんは歩きや自転車で旅行するのが趣味。もの好きにも四時間も夕暮れの河川敷を歩いていると、遠くの藪に黒い服の女の姿を見つける。興味を持った彼はその女の後をつけてみるが、すぐに見失ってしまった。そればかりか、なかなか藪から脱出できない。
そして藪の先にさっきの女の姿を見つけるのだが…。
感想(ネタバレ)
とっとと引き返せばよいのに、ダラダラ歩いてるうちに日が落ちてしまいます。遠くには高層建築物も見える都市部とは言え、こんな明かりもないところで日が落ちてしまったら、ちょっとヤバいですよね。そんな心細さが伝わります。
そこでさっきの女がしゃがんでいるのですが、なにやら手で地面を掻いて何かを掘り起こそうとする仕草をしています。とは言えガチで掘っている風でもなくその真似事みたいな感じ?
稔さんは人間を見つけて安心したのか、その変な女に声をかけて駆け寄りますが、何故かその姿は忽然と消えてしまいます。持っていたペットボトルのお茶も無くなり喉も乾いてきましたが、とにかく歩くしか無い。その十数分後、さっき捨てたばかりのペットボトルが転がっている。は?同じところをぐるぐる回っている?1本道なのに?なんで?と焦りが募ります。
すると今度は藪から誰かの携帯の着信音。戸惑いながらも音のあたりを探るも見つからない。ふと目線を上げるとそこには四つん這いになったさっきの女がいます。土に埋まったように黒く変色した眼窩の視線はこちらをガン見。唖然として声を失う稔さんですが、数秒も経たずにこの女はこちらに猛スピードでこちらに迫ってくる。倒れ込んでしまい、痛みを訴えながら起き上がる彼の手は真っ赤に染まっていました。あの女はもういません(なんか変な声も聞こえる)。ここで映像は終わります。
ここ、なんかメチャメチャな勢いで迫ってくるので結構怖いです。間というか、タイミングがとても良くて、一呼吸するまもなく来るので恐怖感が倍増します。
ここからどうやって脱出したかとかの言及はありませんが、稔さんは首を噛まれて入院してしまったそうです(凄く痛がってた)。そして退院してからは人が変わってしまい、自宅に引きこもってしまいます。過食症で激太りしてしまい、最後は脳出血でなくなってしまったとのこと。肉を求めて、しかも生で食べる。家族が止めても「食べないと体が枯れて死んでしまう」とおかしな言動もあったそうです。
まずはこの女、前エピソードの田城さんですよね。着ている服装が同じです。場所もあの骨壺を掘り出したあの藪でしたね。そしてこのエピソードを見て感じるのは「獣」ですかね。あの骨壺、人間用ではなくペット用のようですし、田城さんが四つん這いになっている様子や、噛みついたという点から「犬」が連想できます。田城さんが掘り出す仕草は骨壺を探していたのか?それとも携帯?興味がつきません。
でもタイトルの意味がちょっと…、全然枯れ尾花じゃないじゃん(笑)。
ん?…田城さんの幽霊じゃなくて、彼女はまだ亡くなっておらず、本人なのか?
死の宣告(少し怖い)
概要
投稿者はフォーチューンバーを経営していた。フォーチューンバーとは、お酒を楽しみながらタロット占いなどの占いをしてもらったりするバーのことで、若い女性にそれなりの人気があるらしい。
この時の客である明木純子さんのタロットカード占いを始める投稿者だが、何度やり直しても「死神」のカードが出てしまう。不吉な予感を覚える投稿者だが、その場では差し障りのない占い結果を伝え、悩みを抱えていた明木さんは、投稿者に感謝して店をあとにする。
だが、その際の様子を記録した映像には、不気味なものが映り込んでいたのである。
その後、彼女は河原で焼身自殺してしまったという。
感想(ネタバレ)
占っている最中に明木さんの後ろから方に手を伸ばすような、半透明の女性の姿が映り込んでいるのと、彼女の去り際に背後に映り込むという、所謂「二度映る系」の典型ですね。最初に映る女性は引いたカメラのもので、半透明なので怖くはないし、去り際のものも、何故かそっぽ向いているのでこれも怖くないです。
でも、その際の明木さんの眼がありえないほどの寄り目になっていて、そっちがけっこう怖かったです。てか、むしろこの顔が怖い(笑)。
占いの最中の映像は何故かぼかしが入っています。4-5回占いをやり直すのですが、それのどれも「死神」のカードが出てしまった、という状況を映像で作り出すのが難しかったのでしょうね。方法としては、タロットカードを数セット買って死神カードの出る割合を高めてこのシーンを何カットもやり直す…でしょうか。時間も予算も限られていますからね(今ならCGやAIで簡単にできる…のか?)。
また「死神」のカードって素人でもわかりやすい絵柄(骸骨とか)なので、死神が出たかどうかはバレちゃうと思うのですけど…(逆位置だとむしろ縁起が良い場合もあることは知っています)。なんかメタ的な感想になってしまいしました。
タイムカプセル(ちょっと待てや)
概要
投稿者の山崎麗美さんは、近く結婚式を挙げる予定の寺山未来さんと、その伴侶である白井和幸さんとともに、高校卒業時に未来さんを含む友人4人で埋めたタイムカプセルを掘り出すため、山中を訪れていた。中に収められた思い出の品々や、掘り出しに至るまでの道中を記録した映像を、二人の結婚式の余興として使用しようという目論見だった。
記憶を頼りにタイムカプセルを掘り起こしてみると、その容器はペット用の骨壺であることが判明する。女子高生当時の無知と軽いノリからたまたま発見したこの骨壺を使用してしまったようだが、「誰かがペットの冥福を祈って埋めたものを、タイムカプセル代わりに使うのは良くないのでは」と白井さんは懸念を示す。しかし、今となってはすでに後の祭りである。
骨壺の中身は、経年による風化のためか、ミニDVテープカセットを除いてすべて消失してしまっていた。彼らは骨壺とそのテープを持ち帰って再生してみることにする。
白井さんと寺山さんが暮らす部屋でテープを再生してみるが、劣化してしまったのか、何も記録されていないようだった。やはりダメだったかと諦めかけたその矢先、部屋中に耳をつんざくような高音のノイズが突如として響き渡る。今回投稿された映像には、その一部始終とともに、恐るべき現象がはっきりと記録されていたのだが…。
感想(ネタバレ)
「キーン」というノイズが出て慌てて停止。デッキ代わりのカメラからはぐしゃぐしゃのわかめになってしまったテープが出てきます。ちょうど最初のエピソード「覗き女」で掘り起こしたものと同じ状況になったようです。
床に置いたカメラの映像にノイズが走ると、そこに半透明の女性の足が現れてすぐに消えてしまいます。そして寺山未来さんの様子がおかしく虚ろな表情で立ちすくんでしまった後、唸り声を上げその顔が不気味で怖い感じに変貌(顔の中に別の目玉も現れたりする)。後ろから首に手をかけるような二本の腕が現れたかと思うとすぐにもとに戻りますが、彼女は咳き込んで倒れてしまい映像は終わります。
その後未来さんは病院に担ぎ込まれますが、命に別状は無かったもののその後精神を病み、婚約も破談になってしまったとのこと。
このタイムカプセルを埋めた4人のうち山崎麗美さん以外の2人ですが、声優志望の女性は疎遠になり連絡が取れず、もう一人は焼身自殺してしまったそうです。てか声優志望の方は「覗き女」の田城佳苗さん。焼身自殺は「死の宣告」の明木純子さんですね。結局全員関係者でつながりがあったことが判明します。
で、ちょっと気になったのですが、山にタイムカプセルを掘り出しに行くときの映像で、寺山さんの言動におかしな点があります。タイムカプセルを埋めに行った4人は「あたしと、るみと、ゆみこと、かなちゃん」って言ってる気がするんですよ。ん?「純子」さんは?そして「ゆみこ」って誰やねん。さらに見つけた骨壺に「純子がこれ使おうとか言ってた」とかの言動があるし、結局「山崎麗美」「寺山未来」「田城佳苗」「明木純子」の4人なのか、実はもう一人「ゆみこ」がいたのか、それとも演出ミスなのか…謎です。
それにしても誰かが埋めた骨壺をタイムカプセルに流用するなんて、無知とは言え「ちょっと待てや」っと言いたくなりました。
おぼろ比丘尼の呪骸(少し怖い)
概要
このタイムカプセルを埋めた地域では「売比丘尼」と呼ばれる売春婦が多く、治安維持の観点から地域から迫害を受けて焼き殺されていたという歴史があることがわかった。そしてこのあたりでは女性の幽霊に呪われるという心霊現象が霊能者の間で知られていたそうだ。彼女らはその呪いの犠牲者だったのか。
尚、前エピソードの山崎さんによると、お祓いを受ける際に例の骨壺タイムカプセルとビデオテープが行方不明であることに気がついたそうである。また精神を病んでしまった寺山未来さんは一時病院を抜け出して行方不明となり、例のタイムカプセルの山で発見されるという事があったのだが、その際の映像にも不気味な女性が映り込んでいた。
最後に河原で発見した骨壺に残されていたテープの映像が解析され、視聴注意を促すテロップの後紹介される。
感想(ネタバレ)
まず病院を抜け出した寺山未来さんの映像。真っ暗な背景を明るく加工して出てきた女の姿は雰囲気抜群で結構怖いです。
そして解析されたビデオテープの解析映像。それぞれ呪う側からの視点になっていて興味深いです。最後に焼けただれた生首が出てくるのですが、これ一体誰なの?そこそこグロいです。なんか昔の比丘尼の呪いというより、現代の個人の恨みみたいな感覚があり、ちょっとピンとこなかったというか、釈然としない感じです。
最初は勝手に掘り起こされたペットの犬か何かの動物霊に呪われたのかと思っていましたが、度々現れるワンピース姿の女性の呪いなんですかね。てか唐突に地域の忌まわしい伝説が登場したりしてよくわからなくなりました。
度々登場する黒いワンピースの女性も、最初は田城佳苗さんなのかと思いましたが、違うような気もしてきました。この女性が山崎麗美さんの言う「ゆみこ」なのかもとか想像が膨らみます。
感想まとめ
全体的には面白かったですね。ただし、最後のエピソードの釈然としない感覚が残ってちょっとモヤリます。相変わらず幽霊が派手派手でエンタメ的には楽しめました。映画版の前巻よりもインパクトは大きいですね。
やはりこちらに迫ってくる系の「幽霊正体枯尾花」が印象に残りました。
そして謎の「ゆみこ」の存在ですかね。演出ミスか、4人から存在を無かったことにされた、忌むべき人物なのか、僕の聞き違いなのか(何度も確認しました「ゆみこ」って言ってます)。謎は深まります。
それでは。
皆様良いお年を。
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