はじめに
「ほんとにあった!呪いのビデオ75」のレビューです。この巻は全般的に低調ですが、1本だけ目を見張るエピソードがあります。
下見(少し怖い)
概要
投稿者は社会人向けキャンプサークルに所属しており、そのイベントのロケハンの為、候補地のキャンプ場を1人で巡っていた。とあるキャンプ場で焚き火を囲むのに最適な場所を探し、湖畔を歩いていると、誰かが「おーい!」と必死に何度も叫んでいることに気が付く。湖の方から声がしたように感じた彼は、カメラをそちらに向けるが、誰もいない。また「おーい!」との叫び声。肉眼でも確かめるがやはり誰もいない。だが、再びカメラを向けたところ、湖の波間に溺れているような人影が写り込む。その人影は、長い間水の中にいたように腐って、顔が崩れ落ちているようにも見えた。しかし、次の瞬間には波間に揉まれたのか、姿を消してしまう。
投稿者は本当に人が溺れていたのかもしれないと、慌てて警察に通報したが、警官は通り一辺倒に調書をとるだけであった。この湖では5年ほど前に溺れた男性がいたと言う。
感想
顔が崩れているので、霊的な何かと感じることができますが、それがなければ本当に人が溺れているようにしか見えません。少し怖いですかね。掴みとしてはまあまあです。
かいぼり(怖くない)
概要
池をかいぼりしたら、引き揚げた魚を入れた桶の間に人の顔。
感想
でかい顔が桶と桶の間に見えます。なぜか横ですけど。かいぼりで外来種だけではなく、池の主も引き揚げてしまったのでしょうか(笑)。テレビ東京の「池の水全部抜く」が流行りだした頃ですよね。相変わらずトレンドをさりげなく取り入れるのがうまいですね。
母の願い(格差社会)
概要
投稿者が幼い娘と近所の公園で遊んでいたところ、ブランコでぼーっと佇んでいる、ちょっと場違いな初老の男性が、突然立ち上がり娘に向かって歩いてくる。「うわっキモ!」っと娘を抱き上げた次の瞬間にはその男性はぶっ倒れていた。流石にちょっと大丈夫ですかと、投稿者は介抱したり、救急車呼んだりしたのだが…。
実はその際の映像に変な声が入っていた。「かすみ…」、「笑って…」。ちなみに娘はそんな名前じゃない。男性は意識を取り戻すが、その際の事は何も覚えていない。公園に行った記憶はなく、それどころかその公園の存在自体知らなかった。その後、その男性から感謝されたと言う。ただ、事あるごとに高価な贈り物をしてきて、最初は「ご丁寧に」と思っていたが、流石に送りすぎ、ちょっとキモ!、というかあの時の映像に変な声が入っていたし、怖くなったので投稿しました。と言う感じである。
取材班はその男性、小暮さんの自宅へ取材に赴く。彼の住むマンションのロビーは天井がバカみたいに高く、まるで一流ホテル。妻とともに小暮さんの住む部屋は、東京タワーと港区の夜景が一望できる超リッチな部屋で、日本が陥った格差社会の現実に憤るとともに、一体どんな悪いことしたらこんな部屋に住めるのだ、とひがみ根性がむくむくと膨れ上がること請け合いのシーンである。
それはさておき、彼の話によると、公園に行った記憶も公園の存在も心当たりがなく、ただ、最近小さな女の子と遊んでいる夢を見るとか、実は心臓移植を受けていて一命をとりとめ、ドナーに感謝していると言う話が聞ける。取材班は臓器移植によりドナーの記憶の断片を共有してしまったのでは、と考え調査を行う。そしてこの話は科学的根拠に乏しいものであるが、少数例の実験では、そのような報告もあることが判明した。また、演出補・大力は、小暮さんが移植手術をうけたちょうどその時期に、6際未満の女児が脳死判定を受け、ドナーになったニュース記事を見つける。だが、体格差のある子供から大人への心臓移植には、演出補・川居は懐疑的であった。
また、音声解析した演出補・寒川の報告により、「かすみ…」の前に「◯◯たい」との音声が確認された。「◯◯」の部分を推測すると、「会いたい」と行っているようにも聞こえなくはない。
感想
声だけなので全く怖くはないですね。それにしても小暮さんのセレブっぷりに圧倒されます。
無人駅(かなり怖い)
概要
投稿者は同僚と飲み、酩酊して終電を乗り違えてしまう。気がつくと、聞いたこともない単線の無人駅に降り立ってしまっていた。時刻表を見ても本日の電車はすでに終了している。仕方がなく、恋人に駅名を告げ、車を出してもらうことにした。迎えが来るまで退屈しのぎに、スマホで撮影しながら駅周辺をブラブラする投稿者。ふと、踏切の端に女がしゃがみ込んでいることに気がつく。不気味さを感じた投稿者は待合室に逃げ込み、恋人の車を待つことに。だが、その際、胸ポケットに入れたスマホは撮影を続けていた。
しばらくして車のクラクションが聞こえた気がしたので、彼は待合室から出て車を探す。だが映像にはそのような音は記録されてはいなかった。駅周辺にいるはずの車を探す投稿者。先ほどの女はいなくなったので、ホッとするがどの道も真っ暗で車は見つからない。すると前方から足音が聞こえ、首の無い女がこちらに向かって走ってくるではないか。驚きの声を上げ、逃げ出す投稿者だが、確かめようと振り返った時には誰もいなかった。
感想
この駅はJR東日本青梅線、白丸駅ですね。Wikipediaに書いてあります。この駅、待合室のドームが特徴的で元々特定しやすいのですが、意図的なのかそこの部分はあまり映像には出て来ません。中央線に乗って、立川で青梅線に乗り換えちゃったんですね、きっと。なお、次の駅は青梅線の終点、奥多摩駅です。こっちの方が大きい駅なのに、なんでここで降りちゃったんですかね。
なお路線によっては酔って降り過ごすと、とんでもないところに連れていかれる事があります。私の同僚で、起きたら信越線の横川だったと言うのを聞いた事があります(20年以上前)。高崎で信越線に乗り換えてしまったんでしょう。私は西川口かどこかから、日暮里に向かっていたものの、気がついたら大宮(笑)。京浜東北線を1往復してしまったんですね。タクシーで帰りましたよ(泣)。
さて、首の無い人間がこちらに向かって走ってくるのは、かつての「ほんとにあった!呪いのビデオSpecial5 疾走!」を彷彿とさせ、インパクトがあります。恐怖度はあっちの方が数段上ですが、最近にしてはなかなかの恐怖映像では無いでしょうか。女性が普通の格好で、禍々しさが無いこと、叫び声など声をあげないことから、怖さ的にはイマイチだったのかもしれません。しかしながら、誰もいない無人駅の寂しげな雰囲気はよく出ており、結構好きなエピソードです。
GPS機能(怖くない)
概要
ポ◯モンGOで幽霊までゲットだぜ!
感想
話の流れ的に、幽霊がポ◯モンGOで投稿者たちを誘い込んだ感じになっています。幽霊がITを駆使して誘い込むとか、マジかよって感じです。映像に写り込んだ姿は、うっすらとしていて怖くありません。
シリーズ・監視カメラ 厠(怖くない)
概要
公園のトイレの鏡が頻繁に割られるので、管理人が監視カメラを設置した。するとそこに不可解な現象が写り込んだ。
一般の男性が、用を足しに入ってくる。すると、個室便所の扉が、ひとりでに勢いよく閉まる。その後、その男性が手を洗っている最中に映像にノイズが走る。彼が立ち去ると、洗面所の鏡に男性の恨めしそうな顔が写り込む。
この公園近くでは、誘拐された我が子を探していた父親が、その誘拐犯に刃物で刺されて亡くなる事件が起きていると言う。
感想
「誘拐された我が子を探していた父親が、その誘拐犯に刃物で刺されて亡くなる事件」なんて聞いたことがありません。そんな大事件なら大騒ぎになっていますよね。
男性が用を足しに入ってくるとき、個室の扉が結構勢いよく「バタン」と閉まるのですが、この男性、別に驚いている様子がないのにちょっと違和感を感じます。鏡に映った顔は怖くはありません。
母の願い 後編(怖くない)
概要
取材班がこの公園の周りで聞き込みを行う。「穏やかな公園」で、事故や因縁、謂れなど無いと皆異口同音に答えるが、さらに深く取材を続けると、住民が大きな口で語りたく無い、闇の部分があぶり出される。それは、公園内での首吊り自殺や、そばのビルからの飛び降りなど、結構な頻度で発生している事であった。
そんな折、製作委員会に1人の女性が訪ねてくる。それは、演出補応援・大塚裕司が交際している女性であるとのことであった。彼女は霊感が鋭いと言う話で、大塚に見せてもらった小暮さんの映像に気になる点があると言う。得意げに紹介する大塚であったが、その前に部外者に映像を勝手に見せたことを叱責されてしまう。
彼女の指摘では、映像の一場面に小さく女の子が映っている点、そして背景にダンスの練習をしている、ジャージ姿の女生徒らしきグループが三脚にカメラを据えて撮影している姿であった。取材班の見解では、女の子の姿は公園ということもあり、幽霊などとは考えづらいというものであったが、ダンスの練習をしている女性グループを探し出し、取材を行うという点については賛同できるものであった。
特徴的なジャージ姿から、その女性グループを特定し話を聞く事ができる。現場に居合わせた彼女たちは近所の中学生で、文化祭で披露するダンスの練習を撮影していたという。また、小暮さんが倒れて騒ぎになったことも認識しており、彼女たちの映像にも小さく一部始終が記録されていた。そして、最初の映像に記録されていた、「かすみ」という名前の女の子に心当たりがあるというでは無いか。さらに映像に小さく映っていた例の女の子が、かすみちゃんに似ているという。中学生の1人は、小学生時代の集団下校グループにかすみちゃんがいたということで、そのかすみちゃん宅に取材に向かうこととなる。
かすみちゃんは祖母の岩田京子さんとの二人暮らし。そして、公園の映像に写った女の子がかすみちゃんで間違い無いとの証言を得た。かすみちゃんも小暮さんが倒れた場面を目撃していた。そして、京子さんから衝撃の証言が飛び出す。なんと、既に亡くなっている、かすみちゃんの母親は臓器移植のドナーになっているということであった。なお死因は飛び降り自殺で、直前に離婚しており、生活苦からのノイローゼという話であった。時期的に、かすみちゃんの母親が小暮さんのドナーになった可能性が高いが、もしそうならば、小暮さんがあの公園に来たのは、娘に会いたいという母の思いだったのだろうか。京子さんは小暮さんをかすみちゃんに合わせてあげたいと語るのだった。しかしながら、取材班は母親が小暮さんのドナーであるという確証を得る方法がない以上、この要望には答えられないと考えていた。
だが、後日小暮さんが事務所に押しかけてくる。京子さんからの面会を望む連絡がしつこく、妻が怯えているというものであった。事務所の方針に反して、大塚が報告もせず、勝手に双方の連絡先を伝えてしまったのだ。大塚は独自に小暮さんに連絡をとり了解を得たため、双方が望んでいるのでええやろ、と軽く考えていたようだ。
だがその後どのような心変わりか、小暮さんから一転して、かすみちゃんに会いたいと連絡が来る。双方の願いが一致したため、例の公園で待ち合わせることになったが、今度はかすみちゃんが面会を拒否し、現れない。小暮さんは立腹して帰ってしまう。
部屋に引きこもり、心を閉ざすかすみちゃんだが、子供に好かれるスキルを持つ大塚が、かすみちゃんに話しかけ、話を聞き出すことに成功する。その話で、実は母親はかすみちゃんを虐待していた事が判明した。彼女の自殺もかすみちゃんを道連れにしようとした無理心中だったのである。この事実はかすみちゃん1人で抱え込んでおり、京子さんも知らなかった事であった。
その後、投稿映像の音声を分析していた寒川から報告が入る。中学生が撮影した映像にも音声が記録されており、最初の投稿映像と音声同士を合成して解析したところ、このうめき声の全貌が明らかになったのである。
「わらうな…」
「いきる…」
「おまえだけ生きるな…」
「にげられない…」
「たすけて…」
「いたい…いたい…」
「かすみ…」
「お前だけ幸せになるな」
「つれていく…」
かすみちゃんの母の願いとは…
感想
「あいたい」が「いたい」に変わっとるがな。
最初はいい話っぽく進んでいた「母の願い」ですが、実はその願いとは、娘をあの世に連れて行く事だった、という話ですね。そこはかとない怖さは感じられて良いとは思いますが、そこに至る取材のゴタゴタが長くて、どんどん恐怖度が薄まって行く感じがしました。
小暮さんの態度が微妙にイラっときますね。連絡先教えてもいいと言ったんだから、この事態の責任の一端はあんたにもあるやろ、と思いました。また、汚名挽回した大塚くんの「子供に好かれる」というスキルも、事前に貼ったわざとらしい伏線(公園で子供を肩車)で絵空事に感じてしまいます。
大塚くん、「ほう・れん・そう」大事ですよ。特に報告がないのはダメですからね(笑)。このエピソードの見所は、大塚くんの勇み足と、その彼女が映像を指摘した際の「お分りいただけたでしょうか」というセリフですね(しかもドヤ顔)。特に彼女のセリフは、「え?、ここ笑うところ?」と思いました(笑)。
感想まとめ
メインエピソードはそれなりに面白く楽しめましたが、恐怖度は全くありませんでした。まあ、現象自体が地味ですからね、声だけだし。
一般投稿も全体的に低調で怖くなかったですね。ただ1本を除いて。「無人駅」は一見の価値があるかと思います。残念ながら「めっちゃ怖い」まではいきませんでしたけれども、「失踪!」という傑作があるのでやむを得ませんね。
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