はじめに
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズ」の第三作目、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03【人喰い河童伝説】」のネタバレを含むレビューと考察です。
前巻同様ディレクター・工藤の傍若無人ぶりが更にエスカレートするのかと思いきや、なんとも意外な展開を見せます。そして今タイトルの怪異もかなりぶっ飛んでいます(笑)。
概要(ネタバレ注意)
工藤のいない事務所
前巻までとは趣が異なり、本作は直近二作のダイジェストから幕を開ける。
負傷により不在となっていたディレクター・工藤に代わり、アシスタントの市川、そしてこれまで裏方に徹してきたカメラマンの田代が初めて正面に立ち、視聴者へ丁寧な状況説明と挨拶を行う。工藤は入院中ではあるが、命に別状はないという報告がなされる。
その直後、新たな投稿映像が紹介される。
投稿映像 沼に潜むもの
投稿者は若い男女のカップル、井上健太と佐藤友里。二人は人里離れた、決して清潔とは言えない沼で釣りをしていた。
途中、友里が用を足そうと草むらへ分け入る。そこで目にしたのは、無残に食い荒らされた動物の死骸だった。肉片が赤黒く散乱し、その周囲には細かく裂かれた胡瓜の破片が転がっている。
その異様な光景から、健太は即座に「河童」という言葉を口にする。
すると、沼の奥の水面が不自然に揺れる。河童のような影が水中を移動し、いったん潜ったかと思えば、手前で激しい水しぶきを上げて何かが飛び出す。映像は断片的ではあるが、確かに“何か”がいる。
沼と河童伝説
この地域には古くから河童伝説が残っているという。
かつてはこの地域の人々は河童と共存していたが、灌漑工事をきっかけにそれの怒りを買い、人を襲うようになった。村人たちは一族を捕らえ、バラバラにして沼へ投げ込んだ――そんな凄惨な言い伝えが残る。実際、今でもこの沼では事故や自殺による水死が多いという。
スタッフの調査で、木枝で組まれた人為的な印と、30センチ強にも及ぶ三本指の巨大な足跡が発見される。近くには胡瓜畑もあり、状況は不気味に符合する。
近所の農家を訪ねると、鈴木という中年男性が対応するが、冷淡な態度で取り合わない。だが足跡の写真を見せると明らかに何かを知っているようだ。
その最中、市川の携帯に連絡が入る。
工藤が病院を抜け出したという。
工藤の復帰、そして覚悟
松葉杖姿で事務所に現れた工藤は、河童を捕まえる夢を見たと語る。それは正夢だと断じ、復帰を宣言する。
再取材の結果、鈴木の娘が一年前に沼で行方不明になっていることが判明する。直前に獣の唸り声を聞いたと証言するが、誰にも信じてもらえず、家族も崩壊したという。
鈴木は河童への復讐を誓っていた。
工藤はともに河童を捉えようと提案するが、鈴木は一笑に付す。工藤は諦めず、命を懸ける覚悟を示し、「コワすぎ!」DVD二巻を渡してその場を去る。
河童の呪い
その夜、よせばいいのに健太と友里は胡瓜を餌に河童を釣ろうとする。すると本当に何かが掛かった。友里の足が水中から現れた何者かに掴まれ、引きずり込まれかける。映像には河童らしき姿がはっきり捉えられていた。その存在からは「こっちへ来い」と言う声が聞こえた気がする。
以後、友里は足に違和感を覚えるようになる。そして事務所でのインタビュー中、突然失神し、泥水を吐き、「こっちへ来い」と低い声で呟く。
工藤は例の「髪で編んだ呪術物」を取り出し、彼女の首に掛けて殴打するという荒療治を敢行する。懲りずに怪異と怪異をぶつける除霊を試みるのだが、恋人を目の前でぶん殴られて黙っている男はいない。工藤は健太にぶん殴られて組み伏せられそうになる。やむなく代わりに市川が友里をぶん殴ることで友里は正気を取り戻す。その後あの呪術物の一つがうねうねと動き出す一幕も。これは工藤のボールペン一刺しで動きを止める。友里への河童の呪いは一旦解けたようだ。
陰陽師・鈴木
三度目の沼訪問。河童捕獲の準備をするスタッフを見下ろす鈴木の姿が見える。工藤は声を掛けるが彼は無言で立ち去ってしまった。
やがて夜になるが胡瓜を山盛りにしても河童の気配はない。工藤が前に見た夢の様子を語っているとそれらしい足音が。足音はイメージと異なり、とても早く一瞬にして市川が引きずられ姿を消してしまう。
河童に引きずられた市川カメラには恐ろしいスピードで森の景色が動いている。すると暗闇から男性が現れ河童から市川を助け出す。その男性はあの鈴木であった。市川を探す工藤は河童の攻撃を喰らい倒れ込んでしまう。そこへ市川と鈴木が合流した。
工藤のDVDを観た鈴木は、工藤の並々ならぬ覚悟を感じたのか、河童捕獲作戦への協力を申し出てくれる。彼は独自調査の末、河童が陰陽道の式神である可能性に辿り着き、陰陽師のもとで修行を積んだという。
鈴木は結界を張り、追い込む術を施す。
ただし河童は一匹ではない可能性がある。
河童との対決
地面に描かれた六芒星の中央で、上半身に文様を施した工藤が待ち受ける。古代の相撲を模した儀式。鈴木が宮司役を務める。
祝詞とともに河童が出現した。異様な速さと力。工藤は中々掴めることができず何度も倒れ込んでしまう。工藤は埒が明かないと悟ったのか、鈴木に内緒で懐にに忍び込ませていた呪術物を取り出して首にかけ、河童との戦いに挑む。その甲斐があってか工藤は河童に一撃を与えることに成功し組み伏せる寸線まで行く。だが河童は巧みに網から逃れ沼に取り逃がしてしまう。
次の瞬間、沼から無数の鳴き声。何匹もの河童が沼から姿を表す。
そして――
水面から、花弁を咥えた巨大な女の顔が浮上する。
鈴木は果敢に立ち向かうが、三人はあわてて撤退。
鈴木は重傷を負い、工藤たちに追いついてくる。その後彼は精神科に入院してしまった。
感染…侵食…
数日後、健太から連絡が入る。退院した鈴木と友里が何故か一緒に暮らしているというではないか。鈴木宅へ向かうと、農作業姿の二人が歩いてくる。驚くべきことに友里の腹は不自然に膨らんでいる。呼びかけに反応せず、虚ろな目で家へ入る二人。そして玄関の先には無数の獣の死骸。
鈴木の右手は水かき状に変形し、顔は緑に変色している。
まるで河童そのもの。
閉じられた玄関は、二度と開かれなかった。
感想(ネタバレ)
いやいやいや。何だこれ。
おもしれえ
ストーリーの組み立てが良いですね。工藤が不在という状況で、これまで姿をほとんど見せなかった田代(白石監督なんですけどね)が顔出し。序盤は実に常識的に進んでいくのに、肝心の鈴木からは何も聞き出せない。
そこに工藤が復帰。例の粗暴な方法で鈴木と対峙するのかと思いきや、なんか共感したのか、工藤の「いっしょに捕まえようぜ」なんて熱いセリフ。DVDを渡して「あいつは真剣だ」「きっと分かってくれる」みたいな態度は意外や意外。
ピンチの市川を突然現れて救い出し、「お前の覚悟は分かった」「一緒に捕まえよう」なんて、かつてのライバルが仲間になるみたいな熱い展開。工藤も自らの境遇を鈴木に語り出したりして、ちょっと友情芽生えちゃった? 少年漫画かよ(笑)。
極めつけは五芒星の真ん中で対峙する工藤の姿。上半身裸で文様だらけ。どこの『呪術廻戦』だよ(笑)。挙げ句の果てには「河童との相撲」ときたもんだ。うん、河童と言えば相撲だよね、やっぱり。
ちなみに工藤の少年時代、両親が目の前で殺されたこと、犯人の顔を見ていて大きな傷があったことなど、彼の過去の新情報がさりげなく示されていましたね。
河童の造形は多分ちゃっちいのだろうけど、こちらに迫ってくるスピードと、断片的にしか映らない思わせぶりな見せ方、激しくブレるカメラワークでなかなかの恐怖を演出しています。思ったより怖かった。なんか『エイリアン』を思い出したぞ。
だけど鈴木の忠告も聞かず、例の「呪術物」を取り出してグダグダになりかける。結局取り逃がしてしまったけど、河童が何匹も現れてさすがにヤバいと逃げ出すのはどうなのかな。命かけてるんじゃなかったの? まあ、複数の河童との戦闘は無謀だと判断できるだけの理性は残っていた、ということでしょうね。でも復讐に燃える鈴木は踏みとどまってしまう。うん、やっぱり少年漫画だ(この展開嫌いじゃないです)。
超驚いたのは、くっそデカい女が「ずももも」と沼の中から出てくるシーン。ちょっと待て、あれ前巻の「夕子」じゃね? ……花くわえてたし。なんでここに夕子が出てくるんだよ。訳が分からないよ(スタッフロールに夕子と同じ役者さんの名前ありました)。
ひょっとして、あの「呪術物」の影響なのか? ということは、この事態を引き起こしたのは工藤のせいかもしれないですよね(笑)。
最後がちょっと衝撃的。まず鈴木と友里が一緒に暮らしているだけでなく、彼女が妊娠している。もし“できちゃった”としても、そんな短期間であそこまで膨らむわけがない。ぼうっとして反応しないのは、尻子玉を抜かれたとかでしょうか。そして、その身体的変化も河童に近づいている。これは河童に直接触れたからでしょうか? 市川は多分、服越しの接触だからセーフ?
この二人が河童化し、子どもが生まれ、人間社会に溶け込んでいく……この辺りの河童一族の復活を示唆しているのかもしれませんね。
あ、スタッフロールの後も見ましょう(びっくりしたよ)。
次も楽しみです。
では。
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