初めに
「放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人」は2008年9月6日に公開された映画、フジテレビで不定期放送されていたドラマ、「放送禁止シリーズ」の劇場版で、同年6月に放送された、「放送禁止6 デスリミット」の続編にあたります。
概要
TV局では、何らかの理由によって放送ができなくなった所謂「お蔵入り」となった素材が、人知れず保管されていることがある。しかし今回関係者の了解を得て特別に公開されることとなったものが今回の映像である。
2007年4月10日、関東近郊高等学校。男性教師らしき人物が校舎から飛び降り〇殺するシーンで物語は始まる。そしてテレビ制作のディレクターらしき人物は、古びた雑居ビルの一室に事務所をかまえる「ジーンベリー企画」を訪れる。この高校教諭の自殺に復讐代行の闇サイト「シエロ」が絡んでいる噂を聞きつけたからだ。
このサイトの復讐内容はAからEまでランク付けされ、それは単なるいやがらせから、最後のEランクでは〇人まで及ぶものであった。メールで不特定の協力者を募り、実行に移していくという。司法では裁ききれない者に鉄槌を下す正義の集団である、とサイトの管理人「七川ノラム」は語る。ディレクターはこの「七川ノラム」を名乗る白い仮面をつけた女性から、「シエロ」の活動の実態を公開してもらうための密着取材を持ち掛けられ、取材が進んでいく。
最初は結婚詐欺師まがいのホステス、内田貴子(源氏名:めぐ)への復讐である。協力者を雇い、彼女の拉致に成功したノラムは人気のない廃ビルで、その自慢の美貌を残虐にも滅多切りにしてしまう。高校教師、高岡輝夫の自殺にシエロが関与していることに確信を抱いたディレクターは、それをノラムに突き付けてこれ以上の取材、協力を拒むが、ノラムは家族を盾に彼を脅迫し、協力を強要されてしまう。
2番目の事件は、スクープ映像だけを求め、そのためにはやらせも厭わないルポライター、古茂田俊作への復讐である。その中でディレクターは偽りの夫婦の夫役を演じることを指示される。「キレて妻役の女を殴れ」など、唐突な指示に戸惑いながらもそれを演じ切るが、妻役の女性は演技を終えると切り替えが早く、「すべてはノラムのため」と呟き、早々に立ち去ってしまう様子に違和感を覚えたりする。
その後ディレクターは、妻(宋野奈津)を演じたこの女性をラーメン屋に呼び出すことに成功するが、「あなたはノラムを知っているのでは?」という問いに、「彼女は復讐という名の亡霊に取り憑かれてる」「サイトをもう一度よく見ろ」と思わせぶりなセリフで席を立ってしまう。彼女が去った跡にはビデオカセットが残されていたが、古い規格のそのビデオテープをディレクターはすぐに見ることはできなかった。
3番目の対象はの医者、深町和彦。依頼者は深町の医療ミスで我が子を亡くした会社員である。この深町は医療ミスを繰り返しているのにかかわらず、責任を取らないばかりか一切の謝罪もなく、事件自体もみ消されているようで、恨みを持つ者も多数いるようだ。実際、シエロの復讐とは関係のない人物が、深町を襲う場面にも出くわしてしまい、ノラムは先を越されることを恐れているようだ。
そんな折、取材スタッフの元にHi8が再生可能なビデオカメラが届く。だが再生してもノイズが激しく何が写っているのかは判別が難しい。宗野真津の言葉を頼りに闇サイト「シエロ」を凝視していたディレクターは、あることに気が付き、狂ったように笑い出してしまう。
ノラムに相対したディレクターは、彼女の正体は江口来実であるとの見解を突きつける。そう、前回の「デスリミット」でも紹介され、小茂田が取り上げたいじめ事件の首謀者と目されて、姿を消した人物である。灯油を被って自殺を強要された神野留真が焼け死んでしまった現場に江口来実が居たために、彼女はマスコミに首謀者として祭り上げられてしまったのだ。ノラムが仮面をつけているのは、やけどの跡を隠すためなのではないか。
「もう終わりにしよう」とディレクターはノラムを諭すが、「私にはあの子が取り憑いている」「あの子が私にもっと復讐をと命じる」。さらに法律の起源はハンムラビ法典で、復讐こそがその本質であるとも説く彼女の態度は頑なであった。
場面は変わり、沖縄にバカンスに出かけた深町に、恋人役の女性に毒を盛らせ、彼の殺害を企てるノラム。人気のない海岸に運び出し、苦しむ深町の前で解毒薬を見せびらかすノラムだが、「復讐の連鎖は無意味だ」という、ディレクターの言葉を思いだしたのか、彼女は直前で思いとどまる。だが、ディレクターはその時思いがけない行動をとってしまうのだが…。
すべてが終わり、海岸には深町と神野光留、そして身元不明の女性の遺体が見つかったというニュース映像でスタッフロールが流れる。そして、神野光留が復元を依頼した例のビデオテープの映像が流れる。そこにはあの事件の真相が記録されていた…。
2023年2月19日追記
ここにちょっとの間、DVD見ながら書いたメモが消されずに残されていました。失礼しました。
感想(ネタバレ注意)
あ~。驚きましたね。
一応ストーリーだけをなぞると、七川ノラムは神野留真。最後まで名前が出なかったディレクターはそのお兄ちゃんの神野光留。七川ノラムが江口来実だと思っていた彼は、ノラムに「復讐の連鎖は無意味だ」とか抜かしていたのに、最後の最後で彼女に復讐してしまう。ノラムが江口来実だと彼が悟ったシーンでケタケタ笑ってしまったのは、積年の恨みの対象をついに見つけたからなのですね。
前巻で宗野登津雄の演技がなんかたどたどしかったのは、何の説明もなしにいきなり夫役を指示されたからで、むしろ役者さんの演技が巧かったんだわ。それにしても事前に説明くらいしろよノラム(笑)。宗野登津雄(神野光留)が「何をきっかけに切れようかな」と逡巡しているのがおかしかった。その結果が「おかずが餃子なのにラー油がない」だったんですね(笑)。
最後に江口来実と神野光留の事件の修復された映像が流れます。修復を専門会社に依頼したのは神野光留であり、修復が完了したのが海岸の事件が終わった後で、彼がそれを見ることはできなかったことが判って感慨深いですね。どちらが神野留真かは判りませんが、自殺というよりはもみ合ううちに片方が灯油まみれになり、そこにライターを投げて殺害したように見えますね。つまり自殺強要ではなく、神野留真が江口来実を結果的に殺したということでしょうか。
そのシーンは合成感ありありですが、モノクロっぽいのでそれが薄れ、断片的に入る叫び声がちょっと怖かったですね。何か言ってるように聞こえますが、残念ながら聞き取れませんでした。
気が付いたこと
- 「ジーンベリー企画」逆から読むと→「リベンジ」
- ノラムの履いている白いサンダルみたいな靴。前巻で宗野宅の玄関になかったか?。
- 「七川ノラム」の声はボイスチェンジャー越しのようだが前巻でもそうだったっけ?
- 「七川ノラム」文字面を左右反転すると「マルノミカ」→「カミノルマ」
- 依頼者「ミルク派の男子」→「みるくはのだんし」→「死んだのは来実」
- 依頼者「丸いな遺伝子」→「まるいないでんし」→「死んでいない留真」
- 古茂田に復讐するときのノラムだが、事務所のノラムとなんか感じが違う気が。
- この時のノラムの声で気が付いたのだが、彼女が発するボイスチェンジャーの声は、実際に発した声ではなく、映像に加工しているようだ(彼女の声のところだけ環境ノイズが異なる)。演出ミスなのか意図したものかは不明。
- この時のノラムは十字架(クロス)のネックレスをしている。
- 宋野奈津を呼び出したラーメン屋。後ろに「替え玉あります」の張り紙。後ろの女性客も替え玉を頼んでいた。ノラムも替え玉?
- 「ジーンベリー企画」の対面のビルって「財前」のあのビルじゃない?
- 依頼者「村の初孫」→「むらのはつまご」→「後、真津はノラム」それとも「誤、真津はノラム」?
- 深町に毒を盛った恋人役の女、クロスのネックレスしているぞ。
- 海岸のノラム、神野光留に刺されたナイフを自ら差し込んで自分にとどめを刺す。憎しみの連鎖を断ち切るためだろうか。それとも…。
- 神野光留、ノラムが身に着けていた自分の贈ったネックレスを見つけ、殺した人物が江口来実ではなく、神野留真、自分の妹であることが判明し、泣き崩れる。
- 海岸のノラム、やっぱ同じ靴履いてた。
- 最後のニュース映像でディレクターが「神野光留」であることが明かされる。
疑問点
- 神野光留の死因は?自殺?
- 神野光留はノラムに家族を盾に脅迫されて協力を余儀なくされますが、両親はなく、妹と二人暮らしだったので今は天涯孤独じゃなかったの?
- 戸川真紀=内田貴子、浅村健=深町和彦のようだが、偽名?仮名?改名?
- 冒頭で飛び降りた教師もおそらく関係者。シエロの復讐劇は実は関係者のみなのか。
- 火事で死んだのは江口来実だとすると、入れ替わった神野留真に来実の家族は気が付かないもんですかね。
- 神野光留が殺したノラムの仮面を剝いだ時にちょっと驚いたしぐさを見せます。ん…?、知っている人だったの?
- その後ネックレスを見つけたときにさらに驚いた表情を見せ慟哭します。知っている人が自分の妹だと気が付いた…え?それって?
- 神野光留が作中で相対した女性って宗野真津以外いない。つまり、宗野真津=神野留真だったってこと?
- でも時が経っているとはいえ、自分の肉親、しかも最愛の妹の顔が判らないもんかね。
- でもしかし、宗野家の玄関にはあの白いサンダルみたいな靴があったし、芝居とはいえ夫の事を「お兄ちゃんみたいで」とか言ってたな。
- じゃあ、小茂田への復讐の時のノラムはいったい誰なんだ?
- 深町に毒を盛る恋人役の女性もクロスのネックレスをしていたので、この女性が古茂田復讐時のノラムなのか。
- 特典映像で黒幕みたいな態度だった。この女性が本当のノラムなのか。
いや、考察要素が多すぎて混乱してきました。劇場版ということで尺が長い分ネタが多すぎます。一回見たくらいじゃ細かいところは判らないわ。当時劇場版をリアタイで見た人はかなり苦労したと思います。
ノラムのボイスチェンジャー部分がちょっと不満ですね。最初(前巻)からそうだったらよかったのですが、「声が変わるとノラムの中の人が判っちゃうじゃん」と、後から追加した設定だったのかと邪推してしまいそうです。
最後の海岸シーンで「まさかこいつお兄ちゃんじゃなかろうな」と思ってみていたので、「ほんとにそうだったんかい!」とかなり驚きました。そして「あの時は?この時は?」と考察する範囲が広がって面白かったですね。しかし「七川ノラム」を反転して縦から読むと「カミノルマ」になるのは、最後まで気が付かなかったよ。
でまあ、この映画、前巻の「デスリミット」とを見ていないと全く楽しめないので、映画作品としてはどうかとも思いました。完全にファン向けの映画でしたね。とは言うものの、かなり楽しませてもらったので、「デスリミット」までこのシリーズを見続けていた人にはお勧めです。
では。
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