呪いの黙示録 第十章(ネタバレあり)

mokushiroku10 レビュー

はじめに

「呪いの黙示録 第十章」のレビューです。2月の半ばにはリリースされていたのようですがすっかり見逃しておりました。

回る鉄塔(きったな!)

概要

若いカップルが遊園地の観覧車に乗るが、女性のスカートに気持ちの悪い粘液がいつの間にか付着していた。粘液の発生源も見当たらず、突然の気持ちの悪い粘液の発生で2人は戸惑うばかりであった。次第に女性の呼吸が浅くなり咳き込み始める。

この辺りには戦中に軍需工場があり、爆撃を逃れた一般市民がこの辺りの防空壕に生き埋めになったが、工場の関係者は工場の設備や製品を優先し、多数が犠牲になったとの話があったそうだ。

感想

薄緑色の気持ちの悪い液体がよりにもよって白いスカートにベットリ。う~気持ち悪い。彼女さんが本当に気の毒です。男性が「なにこれ、なにこれ」を連発するばかりなので、イラっと来た彼女の「知らねえって言ってるだろ!」というセリフが、今までのラブラブな雰囲気が台無しで笑いました。

「きったねぇ!」って感じで怖さは微塵もありません。

この遊園地は東京都荒川区の区立「あらかわ遊園」ではないでしょうか。ここは開園が1922年、戦前からある老舗遊園地で、開業前は煉瓦工場だったそうですから、軍需工場の逸話は事実無根ですね。ただ戦時中は高射砲陣地ではあったようです(Wikipediaより)。

生葬 前編(怖くない)

概要

本作「呪いの黙示録」だが、十章を迎えるにあたって、今まで監督していた寺内康太朗が「Q」か何かで忙しくなり、今回は担当できなくなってしまったので、急遽全く畑違い(前回の仕事はお笑いの賞レース密着もの)の、眼鏡のフレームの形が左右で異なることが視聴者にとって妙に気になる、「平田純哉」が担当することになったことが冒頭で紹介される。

今回案件は、差出人不明の1通のメールから始まる。そこには「たすけてください」「時間がない」としか書かれていなかったが、そこには一本の映像が添付されていた。その中身は。小さな会議室か何かでプロジェクターで映し出された、わざとらしいプロモーション映像を囲む若い男女の集団の様子で、郷土の伝統行事「生葬」の復活を宣言し、彼らが狂喜する一種異様な様子が収められていた。

映像内で示された実在の地名(伏字)から、その県庁に勤めている新監督平田の同級生、西田さんに電話インタビューを試みる。するとその地域には確かに「生葬」という風習が実在したことが分かるが、記録は残っておらず、口伝でのみ伝えられる、所謂「言い伝え」レベルのものであるらしい。

最近大規模な併合があり、やたらだだっ広くなってしまったB市の中心街で、スタッフは街角インタビューを試みるが、なかなか収穫はない。だが、ただ一人、しかもこの「生葬」復活プロジェクトの中心人物の1人である若い女性、金森さんを発見することに成功する。

この女性によると「生葬」とは死期を悟った人物が志願して生きたまま棺に入って埋葬されるという、「それ法律的に大丈夫ななのかよ」というものであった。この市のC地区で70年ぶりに志願者が現れ、この風習が復活するという。こんなおかしな風習を嬉々として復活させようとする団体に胡散臭さを感じざるを得ないが、金森さんの案内でスタッフ一同はC地区に向かうことになった。

疑う間もなく金森さんに今回の志願者、山本さん宅に案内されるが、当の山本さんはぼそぼそ話すだけで、浮かない様子。息子たちにも相談していないとか、金森さんがボランティアと称して毎日家に入り込んでいるとか、スタッフ達が山本さんに連絡先を渡そうとすると、金森さんにやんわりと牽制されたりとか「金森さんに言わされてるだけなんじゃね?」という疑惑の匂いがプンプンである。

恒例の食事シーンでスタッフたちは懸念を共有しているが、具体的な方策があるわけでもなく、成り行きを見守ることに。平田が「これ心霊要素ある?」と疑問を呈したり、匿名メールの差出人が「help.mum.my092@ドメイン」から「お母さん」との関連を想像したりと言ったやり取りが行われる。 食事が終わった頃、この団体の主催である青年会議連の代表が直接話したいとコンタクトしてきた。

いかにも意識高い系の風貌の青年会議連の弓坂さんは、不気味な笑みを絶やさずこの「生葬」のプレゼンで、長い歴史やその意義を問う高説を行うが、その胡散臭さは増すばかりであった。まあ端的に言えば「安楽死」みたいなものである。そしてこともあろうか「体験」してみますか?などど抜かしてきやがった。

は?

感想

なんか意識高い系の自己啓発セミナーとかマルチに誘われているような雰囲気。しかもそれが「生葬」とか言う胡散臭いうえに殺されるかもしんないなんて、「まさかね」とは思いつつも、何か言いようのない不気味さを感じる風習に誘ってくるなんて心がざわつきます。

しかもそれを素晴らしい事のように言って、嬉々としている雰囲気も、不気味と言うより気持ち悪い。そんな雰囲気は良く出ていると思います。

てか生きたまま棺に入るとか、安楽死ですらないじゃんか。飢えと喉の渇き死んでいくとか。ちょっとした拷問死だよ。

円環⾳楽(怖くない)

概要

深夜の公園で「サイファー」と呼ばれるラップの掛け合いに興ずる若者たち。彼らの背後、少し離れたところに赤い服をまとった女性がこちらを見つめ、手を振ってているが、すぐに消えてしまった。

映像に映る男性の一人は踏切で事故死してしまったそうである。

感想

「サイファー」、「パリピ孔明」で知りました(笑)。それはいいんですが、こんな住宅地でやられるとちょっと近所迷惑ですよね。

後ろの女に関しては概要のとおりでそんなに怖くありません。赤いドレス纏った女がその場所にいるようにしか見えません。まあ、場違いではあるのですが。

御客様(少し怖い)

概要

1998年と言う古い映像。とある関西の幼稚園の運動会の様子。父兄席に明らかにその場にそぐわないスーツ姿の男性の姿写り込んでいた。

てか、口に包丁咥えているし…。

この幼稚園はこの映像の3年後、重大な事故を起こし現在は存在していないそうである。

感想

概要のとおりです。モノクロっぽい映像に溶け込み過ぎていて、初見では全く気が付きませんでした。スローで見ると、包丁咥えているその異様な姿にぎょっとします。思ったより不気味でしたね。

生葬 後編(少し怖い)

概要

その後、生葬志願者の山本さんから連絡があり、本当は生葬などやりたくないとの訴えがあった。なんか場に流されてなし崩しに生葬志願者になってしまったとのこと。山本さんはスタッフに助けを求めるとともに、あのメールの送信者ではない事、「help.mum.my092@ドメイン」は「mummy=ミイラ(即身仏)」を現しているのではないかとの見解も聞ける。

その後スタッフが対策を考えあぐねている間に、結局その体験に江益が成り行きで参加させられることになってしまう。とは言っても実際に死ぬわけではなく、棺に入るまでの真似事である。危険を感じるスタッフであったが、これまたなし崩しに江益は棺に入ることになってしまった。

が、あっさりと江益は無事に帰還する。でもショックを受けた彼女は言葉少なく、その後1週間休む羽目になってしまったが。

棺の中の撮影は断られたが、江益はちゃっかりと隠しカメラで撮影していた。その棺内では、繰り返し弓坂の声のメッセージの入った旧式のカセットテープが棺の中に入っていたり、そのメッセージがテープからだけではなく、その声があちこちから棺内に響き渡ったり、その声の中に「たすけて」と言う声が混じってたり、といったちょっとした心霊的とも思える怪現象が記録された。

後日県庁の西田さんに、行政からの調査をしてもらうための依頼をするが、青年会議連は全くの普通で、「生葬」とか何の話だよ、と言う感じだったらしい。山本さんにも金森さんにもそんな話知らんと言われてしまい、というかそもそも弓坂なんて男は知らないし、「生葬」なんてことも聞いたことがないと言われてしまう。

そして不思議なことに江益の端末に残されていたはずの金森さんや山本さんとのメールのやり取りの履歴はきれいさっぱり消えていた。最初の助けを求めるメールのアドレスも消えており送信不能。映像やパワポ資料以外の痕跡がなくなってしまったのである。

そして最初のメールのアドレスに奇妙な一致が見られた。アドレスに記された三桁の数字「039」。これが弓坂の残したパワポ資料に記載された青年会議所の会員番号と一致していた。

はたして弓坂は存在したのであろうか。それとも最初のメールで助けを求めていたのが弓坂本人だったのだろうか。

そして今回の映像に残る彼の姿に、ある驚くべき事象が写り込んでいた…。

感想

意味の分からない、意外な展開でしたね。「生葬」を復活させたい何かの大いなる力が働いていたのでしょうか。弓坂はその力に操られたが、スタッフの介入により失敗した?

それとも助けを求める弓坂が、強引に江益に生葬を体験させたのでしょうか。「生葬」の復活を妨げたのは江益の持ち込んだビデオカメラのせい?

持ち込んでいなかったらどうなってたの?

そして失敗した生葬の復活の清算のために弓坂は存在自体消されてしまった?

てかそんなんで失敗しちゃうのか?

江益の携帯端末の履歴は消せるのに、パワポ資料や映像は消せないんだ、とか。

いろいろと疑問は尽きませんが、中途半端に無かったことにされる、全く持って理屈に合わない奇妙な不気味さは感じますね。

ある驚くべき事象とは、映像に残る弓坂の全ての肩に黒い手が乗ってたと言うものです。その手と弓坂の肩の解像度の差が激しくてとってつけた感が目立っていたのは残念。

感想まとめ

今回は全編で80分と意外と大作でした。結構な尺ですがあまり時間経過を感じさせませんでしたね。最初は「かったるいな」と思って観ていたんですが、意外と面白かったです。不気味なストーリーで見せるこのシリーズの真骨頂でした。

それに引き換え、隙間エピソードのおまけ感が際立ちます。これならメインエピソードだけで良いのではないかとも思いました。

それにしてもこのシリーズ、ちょっとぶっちゃけすぎですね(笑)。前回は「Youtubeに勝てんわ」とか、今回は今回で冒頭で「テラコー忙しいから抜けるわっ」て(笑)。

この先どうなってしまうのでしょうか。

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