映画・悪魔と夜ふかし(ネタバレあり)

eye-cachi 映画レビュー

はじめに

夏の「ほん呪」や「XXX」のリリースまで、まだ少し間があるので、柄にもなくまた映画レビューしちゃいます。

今回観たのは『悪魔と夜ふかし(原題:Late Night with the Devil)』という2024年オーストラリア制作のホラー映画。監督はコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟で、主演はデヴィッド・ダストマルチャン(ジャック役)とのこと。

うん、映画に詳しくない僕には、名前は正直まったくピンと来ません(笑)。オーストラリア映画は「マッドマックス」と「クロコダイルダンディー」しか知りません。あ、3年前にレビューした「トライアングル」もオーストラリア・イギリスの合作でしたね。

いや、遙か少年のころに見た「スカイ・ハイ」もオーストラリア・香港合作映画だったな。「スカイ・ハイ」は正直感想が「つまらなかった」ことしか覚えていないのですが、超有名な主題歌「スカイ・ハイ」が素晴らしいんです。日本ではプロレスラー「ミル・マスカラス」の入場曲としてヒットしたこの曲なんですが、僕が好きなのはこの映画の主題歌「スカイハイ(メインテーマ)」なんですよ。間奏がいいんですよ間奏が!

え?この曲知らない?超有名でしょ?え?半世紀前の曲なんか知らん?うそでしょ?
リリース1975年…(´・ω・`)

と言うわけで、全く共感を得なさそうで、全く関係の無い前置きはこれくらいにして、本編行きます。

概要

舞台は1970年代アメリカ。

生放送の深夜トーク番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャックは焦っていた。視聴率が低迷し、かつての人気に陰りが出ていたからだ。番組を立て直そうと、がんで余命わずかの妻まで出演させるも、思うように回復せず、ライバル番組には一歩及ばない。そしてついには番組存続の危機を迎えてしまう。

そんな中、ジャックはかつて関係のあったカルト団体の“つて”で、集団自決事件を起こした宗教団体の唯一の生き残り少女を追った女性ライターに接触。彼女を通じて、その少女に悪魔召喚の降霊を行わせるという、起死回生のハロウィン特番を企画する(ちょうどこの日に視聴率調査がある)。

果たしてこれは、ジャックにとって希望の一手となるのか。それとも破滅の導火線なのか─懐疑派のゲストも見守る中、生放送のスタジオで降霊術が始まるのだが……。

感想(ネタバレ注意)

さて改めて感想です。この作品、かなり面白かったです。

冒頭は「1977年に実際に放送されたトーク番組の“放送事故回”のマスターテープが見つかった」という体で始まります。こういう形式は「ファウンド・フッテージ」って呼ばれてるんですね。

このジャンルで有名なのは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「REC」などがありますが、古くは1983年公開(日本)「食人族」まで遡るとか。当時、映画館にわざわざ観に行ったんですが……正直、亀の生き造りシーン以外は覚えてません(笑)。

ちなみに僕が好きなこの手の作品は「REC」「グレイヴ・エンカウンターズ」「クローバーフィールド」あたり。ファウンド・フッテージは結構好きなジャンルだったりします。

気づいたこといろいろ

ストーリーをなぞると完全ネタバレになってしまうので、以下気が付いたことを述べますね。

  • 70年代の番組という設定なので、画面は4:3、映像もVHSっぽく劣化していてレトロ感が良い。
  • CM前のアイキャッチや、司会者ジャックの軽妙なトーク、観客の笑い声もリアルで、「あれ? これ本当にあった番組?」って錯覚しそうな臨場感がある。
  • 番組が進むにつれて、だんだんスタジオの空気が変になってくるのが絶妙。不協和音がじわじわ広がっていく感じ。
  • そんな中、ジャックやプロデューサーが「取れ高」にテンション上がってるのが怖い。やばい現象に直面しても、「お前が仕込んだんだろ?」みたいな疑い合いをしてて、マスコミ魂を感じます(苦笑)。
  • 後ろで演奏してるバンドメンバー、気づくと少しずつ減っている気がします。逃げ出してるのか…。
  • そのバンド、心霊現象にビビったのか、アイキャッチに入る際の演奏がヘロヘロになる箇所があるのに笑ってしまいました。
  • 最初のインチキ霊能者がいなくなった後、うっすら緊急車両のサイレンが聞こえます。後に救急搬送されたことが判明(そしてその後…)。
  • 心霊に懐疑的なゲストが催眠術を披露する場面、映像として「幻覚」が描写されるんですが、これマスターテープの映像じゃなかったの?と思ってしまう。
  • → これは「観ている我々自身も幻覚を見せられている」って演出か、それとも悪魔的な「介入」で記録に焼き付いたのか…?
  • この幻覚、そこそこグロいです。
  • リリー(悪魔憑きの少女)の視線がずっとこっちを見てるシーン。完全にカメラ目線で、見てるんじゃなく「見られてる」感じがしてゾワッときます。
  • 終盤、画面が突如16:9のハイビジョンに変わる演出。これ、ジャックの内面世界? 現実と虚構の狭間? あの演出の変化が気になります。
  • 明らかに「エクソシスト」っぽいオマージュが随所にありましたね。特にリリーの演出なんかはそれを意識してる気がします。
  • ラストまで観ると、ジャックはカルト団体の力を借りて悪魔と取引、「全米一の有名人」になることを願っていたことが伺えます。その結果、妻の病による死、そしてあのとんでもない生放送に繋がっていく。
  • 最後はそれまでのリアル風演出から一転、絵的にド派手なホラー描写になるのも、驚きつつ楽しかったです。

ジャックの願いは叶う

ある意味、彼の願いは「完全に叶って」しまいました。ただしそれは、代償として何もかもを失った上での名声(いや、名声じゃないな)。言葉通り、「全米一の有名人」になったのです。

まるで古典ホラー『猿の手』や「悪魔との契約」系の寓話を感じました。誰も望まなかった形での「願いの成就」に、唸ってしまいました。

キャストが良かった

ジャック役の「デヴィッド・ダストマルチャン」氏が中々良かったです。おどおどして時折「なにか見えてる」ような怯えた視線。そしてトークスキルの裏に感じる腹黒さというか、野心家のしたたかさ。人間味がリアルで素晴らしかった。

リリー役のイングリット・トレリちゃんも印象的でした。あどけない少女が、悪魔と同化したとたんに一変。あの表情、怖すぎます……。

こっち見んなって!怖いから!(笑)

最後に

いや〜、とても面白く、怖く、そしてどこか悲しくもある作品でした。
細かな伏線や演出もたくさん散りばめられていて、何度も観ないと見逃すところは、かなりありそうです。なんとなく「放送禁止」を彷彿とさせます。

ちなみにこの作品、僕のポンコツアンテナでは引っかからなかったんですが、昨年10月ごろ、ブログのコメント欄で「とおりすがり」さんにおすすめいただいていたものです。

視聴もレビューも遅れてしまって、本当に申し訳ありません。もっと早く観ればよかったと後悔しています。改めて、素晴らしい作品をご紹介いただきありがとうございました!

完全フィクションのホラー映画、最近はあまり注目してなかったんですが、こんな作品があるならもっと積極的に観てみようかなと思いました。

もっとアンテナを高くして、また面白い作品に出会いたいと思いました。

コメント

  1. fd より:

    グレイヴ・エンカウンターズ、私大好きです。
    他にも似たような作品でセブンナイトインアサイラム、パラノーマルシリーズも見応えがあります。
    パラノーマルシリーズはマイナーですが、パラノーマル・インシデントやパラノーマル・リアリティが推しです。
    ただ、通常のパラノーマルシリーズと比較してこちらはグロテスクな描写もございますので、視聴する際はご注意を。

    • itton より:

      Gerardさん
      『グレイヴ・エンカウンターズ』、面白いですよね。
      『パラノーマル・アクティビティ』シリーズは1作目しか観ていないのですが、2作目以降も楽しめますか?
      『グロテスク』についてのアドバイスもありがとうございます。視聴にはそれなりの覚悟が必要そうですね。

      ちなみにファウンド・フッテージとは少しジャンルが違いますが、『SAW』シリーズも実はけっこう好きだったりします。

      Hi Gerard,
      Grave Encounters is such a great film, isn’t it?
      I’ve only seen the first Paranormal Activity, but are the sequels also worth watching?
      Thanks for the heads-up about Grotesque—sounds like something I need to mentally prepare for.

      By the way, while it’s not exactly found footage, I have to admit I actually enjoy the SAW series quite a bit too.

      • Gerard より:

        Here in the answer, you are addressing me, but the person who wrote to you above is not me.

        Usually, I recommend Japanese horror films to people, so I am not ready to recommend anything Western. Of the Japanese films, I really like Kiyoshi Kurosawa’s Séance, it is worth watching without knowing anything about the plot at all.
        I really like the film Ju-Rei by Koji Shiraishi, released by Broadway. For some reason, this film is very underrated. In my opinion, it has the standard atmosphere of Japanese horror films. It is still at an extremely high level.
        Of course, I like Kisaragi Station and The Cursed Apartments (Hideo Nakata). These are very soulful and interesting films in their genre.
        And my last recommendation, I watched this film recently, Occult Bolshevism. This is a film by Hiroshi Takahashi, and it also has a wonderfully built atmosphere and incredibly well-woven direction. Oh yeah… And just in case – Senritsu Kaiki by Shiraishi. The beginning of these movies is very close to the investigations in Noroi but video, it’s a very good series. Later it will become a good satire on a genre like Honju.

        • itton より:

          Gerardさん、このたびは大変失礼いたしました。申し訳ありません。

          完全に私のうっかりミスです。このコメントを読むまで、ずっとGerardさんの投稿だと思い込んでいました。「あれ?Gerardさん、日本語がすごく上達されたなあ」なんて、のんきに感心していたくらいです。fdさんもさぞ困惑されたことと思います。そちらにも改めてお詫びしなければなりませんね。

          白石監督は、昔「ほんとにあった! 呪いのビデオ」でもおなじみでしたが、日本でも最近また注目を集めている方ですね。私も遅ればせながら作品をチェックしてみようと思っています。まずは「ノロイ」から観てみようかと。おすすめ作品もいろいろ教えていただきありがとうございます。黒沢清監督の作品も気になってきました。

          「きさらぎ駅」は、怖さという点では少し物足りなく、日本の有名掲示板発祥の「きさらぎ駅」とはだいぶ設定が違っていて少し残念でしたが、単体の映画として観れば、謎解き的な展開もあって十分楽しめたと思います。私のレビューは、鉄道ファンならではの視点で本筋とはあまり関係のない突っ込みが多く、ちょっと散漫になってしまったと反省しています。続編も発表されているようなので、そちらも観てみたいです。

          改めて、混乱を招いてしまったことをお詫び申し上げます。

          Dear Gerard,
          I sincerely apologize for the confusion—this was entirely my mistake.

          Until I read this comment, I had genuinely believed it was written by you. I even thought, “Wow, Gerard’s Japanese has really improved!” without giving it a second thought. fd must have been quite confused too, and I owe them a proper apology as well.

          Director Shiraishi, once known for Honto ni Atta! Noroi no Video, has been gaining renewed attention in Japan lately. I really need to catch up on his work—I’ll start with Noroi. Thank you also for the other recommendations. I’m now quite curious about Kiyoshi Kurosawa’s films too.

          As for Kisaragi Station, I found it a bit lacking in the horror department, and it diverged significantly from the original version that originated on Japan’s infamous message boards, which was a bit disappointing. That said, as a standalone film, I thought the mystery-solving aspect made it enjoyable in its own way. My review ended up being a bit scattered—probably because I’m a railway enthusiast and couldn’t resist making comments unrelated to the actual story. I’ll try to do better next time. Since a sequel has been announced, I plan to check that out as well.

          Once again, I sincerely apologize for the misunderstanding.

          • Gerard より:

            白石監督は『本呪』の手法をほぼ全て『ノロイ』に取り入れているように思います。しかし、この作品は欧米のJホラーファンの間で評価された数少ない作品の一つです。そのため、白石監督は現在、ホラー映画界で最も人気のある日本人監督であり、黒澤監督と肩を並べています。

            実は随分前に観たのですが、『呪霊』は大変素晴らしい作品だと思います。非常に恐ろしく、日本的なホラー映画の作り方を体現していると思います。もちろん、彼の他の作品ほど独創的ではありませんが、過小評価されているように思います。『監死カメラ4』についてもお答えすべきかどうか分かりませんが、先ほど触れたエピソードで、アシスタントの肩から不気味な影が確かに現れました。

    • itton より:

      fdさん、すみませんでした。
      何故か、最近コメントをくれるGerardさんと思い違いをしてしまいました。「なんで英語???」と困惑されたことでしょう。
      深くお詫びいたします(汗)。

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