はじめに
「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!シリーズ」第9作目、『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02【暗黒奇譚!蛇女の怪】』のネタバレを含むレビューおよび考察です。
異なる世界線の工藤ディレクターはより一層凶暴化していますが、ちょっと今回は様相が異なります。
概要(ネタバレ注意)
定職に就かず実家で暮らす、いわゆるニートの男性・櫻井。38歳にして童貞の彼は、近所の山中で爆竹を鳴らしたり、周囲の風景を撮影したりして暇をつぶす、どこか冴えない男だった。
そんなある日、櫻井は河原に佇む儚げな少女・川野つぐ巳を見かける。
こんな場所に若い女性がいるのは珍しい。そう思った櫻井は、彼女をこっそり撮影するが、カメラ越しに目が合ってしまう。動揺した櫻井はその場で転倒。これをきっかけに、彼女と言葉を交わすことになる。
何気ない会話の中で、つぐ巳が病弱であること、テレビもない俗世間から隔絶されたような環境で、母親と二人きりで暮らしていることを知った櫻井は、たちまち彼女に心を奪われてしまう。
住まいや連絡先を聞き出そうとするものの、つぐ巳はそれを軽くかわし、風のように姿を消してしまった。
しかし櫻井は、彼女のことが忘れられない。半ばストーキング同然の行動の末、ついにつぐ巳の家を突き止める。ところが、そこで彼を迎えたのは、どこか不気味な影をまとった彼女の母親だった。櫻井はあえなく追い返されてしまう。
それでも諦めきれない櫻井は、母親の不在を狙って再びつぐ巳に接触を試みる。つぐ巳は明確に拒絶するわけではないものの、櫻井の再訪を迷惑がり、やんわりと距離を置こうとする。
さらに、彼女の口から漏れる「妖怪人間になる?」という奇妙な言葉、母親が出す生きたミミズの食事、家の中を這うヘビ、家の周囲に吊るされた空のペットボトルなど、つぐ巳の暮らす家には明らかに異様な空気が漂っていた。
ある夜、櫻井が再び家を訪れると、中からは折檻を思わせる声と物音が聞こえてくる。中を覗くと、母親が布団の中のつぐ巳を棒で叩いているではないか。
虐待ではないか。そう考えた櫻井は、勝手に家へ侵入し、その様子を撮影し続ける。ところが、布団の中から現れたのは、鱗に覆われた腕、そして大蛇の尾のようなものだった。狼狽する櫻井の前に、母親が包丁を手に襲いかかってくる。櫻井は這々の体でその場から逃げ出した。
その後、櫻井は一連の映像を「超コワすぎ!」スタッフのもとへ持ち込む。つぐ巳が心配なので調査してほしい――それが今回の投稿映像の発端だった。櫻井はさらに、この地方に伝わる「蛇女伝説」との関連性も示唆する。
依頼を受けたディレクターの工藤は、いつものメンバーであるアシスタントの市川、カメラマンの田代とともに調査へ乗り出す。
しかし、工藤の口から飛び出したのは、いつにも増して斜め上の言葉だった。
「お前、あの子をモノにしたいんだろう!?」
つぐ巳を救うというより、櫻井の恋を成就させるため。そんな妙な方向へ話は転がり、工藤たちは暴力も辞さない勢いで調査を開始するのだが……。
感想(ネタバレ)
まず投稿映像が長い(笑)。なんと本編の半分近く(約40分)を占めており、やや冗長に感じられます。ただ、女性とろくに会話もできずにキョドる櫻井と、物怖じしない川野つぐ巳とのやり取りには不快感はなく、むしろどこか爽やかな印象すらあります。
概要の「妖怪人間になる?」という彼女のセリフですが、これは櫻井が最初の会話で和ませようとして『妖怪人間ベム』のベロの決まり文句「オイラ、怪しいもんじゃないよ」を持ち出し、盛大に滑ってしまうくだりへの応答でもあります。正直、若い世代には伝わらないのではと思いましたが、2012年には実写映画化もされており、ベロ役を鈴木福君が演じていたことを考えると、完全に的外れというわけでもなさそうです。
とはいえ櫻井は、贔屓目に見てもかなり冴えない人物であり、さらにストーカーまがいの行動にまで及んでいるため、相手に気味悪がられても仕方がないと感じさせる描写が妙にリアルでした。
やがて櫻井は彼女の自宅を突き止めますが、母親の存在感があまりにも強烈で、“コワすぎ”な雰囲気はここまでの流れとしては悪くありません。ちなみにこの母親は、若くして両親を亡くし、かつては明るく良い人物だったものの、ある日を境に豹変。UFOを見たと騒ぎ、父親不明の子ども(つぐ巳)を出産した――という近隣住民の証言があり、この地域に伝わる「蛇女伝説」を体現する存在として描かれています。
調査を依頼された工藤が、櫻井の下心を見抜いて「お前、あの子をモノにしたいんだろう!?」と踏み込む展開には、やや唐突さを感じつつも納得してしまいました。
その後、工藤たちは正面から家に乗り込みますが、ここで櫻井の過去の問題行動が露見し、あの不気味な母親から思いがけずの正論で返り討ちに遭います。その後の工藤たちの追及により、櫻井に悪意がなかったことは判明し、場の空気がやや軟化したところで、今度は母親による超常的な「蛇攻撃」を受けることになります。
その後はワチャワチャとした展開になりますが、櫻井は川野つぐ巳への想いから次第に覚悟を固め、彼女たちの前で常軌を逸した方法によってそれを証明します。その想いを受け止めた彼女は、母、櫻井とともにこの世から姿を消し、伝説をなぞる形で物語は幕を閉じます(最後事務所に挨拶に来ますw)。
また、生きている蛇をつまんだり、櫻井のやらかしに対して平手打ちを食らわせたり、母親の蛇攻撃に動揺する工藤たちをよそに「対蛇木刀」を手に車を降りて櫻井を助けに向かったりと、市川の男前な行動も印象に残りました。彼女の兄に関する霊感設定がわずかに示される点も見逃せません。
最終的に櫻井は蛇の妖怪人間のような存在へと変貌し、ある意味で恋を成就させますが、工藤は“操られて向こう側へ行く”ことは良しとしません。正気を取り戻したうえで、自らの意思で人間を捨てる覚悟を示した櫻井を認める流れには、一定のカタルシスがありました。ただし、そこに至るまでの過程がかなり暴力的である点は否めませんが(例の狐の尻尾が活躍しますw)。
ところで、母親がつぐ巳を折檻していた理由については、やや分かりにくく感じました。蛇化を防ぐためかな?また、「つぐ巳」という名前も、「巳=蛇」を「継ぐ」という意味合いを持たせているように思えます。
因みに川野つぐ巳を演じていた女優さんは、「コワすぎ!FILE-04【真相!トイレの花子さん】」で山口菜々ちゃんを演じていた「桑名里瑛」さんでした。いやずいぶんと大人になりましたね。
全体としては十分に楽しめる作品でしたが、ややパワーダウンした印象も否めません。物語の軸が櫻井の成長ドラマに寄っているため、純粋な恐怖描写は控えめで、最も印象に残るのは母親による「蛇攻撃」シーンでした。
なお、本作をもって「コワすぎ!」シリーズはいったんの区切りを迎えます。当時はネタ切れによる打ち切りに近い状況だったのではないかとも想像されますが、その後、約8年を経て唐突に復活を果たすことになります。
それでは。
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