はじめに
「ほんとうに映った!監死カメラ3」のレビューです。早くも制作会社が「エル・エー」に変更され、「馬車馬企画」は「協力」としてクレジットされるのみになってしまいました。監督も変更されて、なんと「ほん呪16-21、71-80」で監督を務めたおなじみの福田陽平氏と、田中佑和氏という方の連名に。作風も1、2巻の超真面目なつくりから、少しドラマ性のある感じのエピソードが追加され、かなりの軌道修正がされている感じがします。
エピローグ(タイトルなし)(怖くない)
概要
とあるビルの喫煙所付近で人待ち顔の女性。背後のガラスにその姿が鏡のように反射して、背をむけている姿が見える。すると、手前の女性は動いていないにもかかわらず、反射したその姿がゆっくりとこちらに向く。それは本体を一瞥してから向き直り、元に戻る。
感想
鏡に映った姿が本体を無視して動く。異世界感漂う不思議な映像…と言いたいですが、「ほん呪21」の「鏡の中」という、有名な映像が既にあるので新鮮味はありません。そういえば「ほん呪21」も福田監督でしたね。
ディスプレイモニター(怖い)
概要
秋葉原の街角にある電気ショップ。防犯カメラ関連の専門店であるこの店の、店頭にディスプレイされているデモカメラの映像に不可解なものが映り込んだ。
それは、このカメラを一瞬覗き込む、目を見開いた人の顔であった。角度的に上方から覗き込んでおり、脚立などに登って相当無理な体制をとらなければこのように映りこむことは考えられない。さらに、同じ個所に陳列された別のカメラには写っていないのだ。
感想
かなりでかい顔が急に現われて結構びっくりします。これは結構怖いので、耐性のない方にはかなり衝撃的ではないでしょうか。まあ作ろうと思えば作れちゃう映像ですが、ひょいと表れてすぐ消える出現の仕方にセンスを感じます。
それとカメラに写る場所が、秋葉原をよく訪れる方ならばっちりわかっちゃう、何ならお店まで特定できそうな、とても特徴的な場所なので、それが逆にリアルさを感じますね。結構好きなエピソードです。
インターネット中継(怖いが…)
概要
夜中にニコ動で生中継されたとあるアイドルの映像。自宅と思しき場所からライブ配信されていた映像であるが、ファンに向かって語り掛ける彼女の背後の窓から男性の顔が覗き込む。窓から見える街灯の位置から、その部屋は2階であり、ベランダ等もないのでそこに人が立てるはずはないのだ。
この映像を提供してくれた、投稿者の中村さんによると、「逃げろ」「やばい」「後ろ後ろ」などの彼女に注意するニコ動のコメントが増えてきて、何か異常があることに気が付いたそうである。生中継しているこのアイドル「みるきぃ」さんは、最初気にも留めていなかったようだが、2回目に窓に男が映り込み、注意喚起のコメントがあふれてしまった時点で言葉を失う。
彼女が意を決して後ろを振り返ると、そこにはいつの間に部屋に入り込んだ男の姿があった。短い悲鳴の後、映像は突然終了してしまう。
その後、彼女が映像を更新することはないそうである。
感想
ありがちな状況ですが、窓から覗き込む男の顔、その出方が良いです。「後ろ後ろ」等のニコ動のコメントも臨場感があって怖い。「逃げろ」「やばい」などのコメントであふれてくると、アイドルの子が蒼白になって黙ってしまう様子もなかなかリアルです。
ただ、部屋の中まで入ってきた男の輪郭がちょっと白くて、とても合成っぽいのが非常に残念で、惜しいエピソードです。
ピンぼけ(怖い)
概要
あるマンションのエレベーターホール。このマンションの管理人である投稿者の松田さんによると、ある特定の階の監視カメラの映像が、ピントが外れてぼやけてしまうという。故障を疑って交換してみたものの、相変わらずこの現象が発生してしまう。
松田さんには特別に思い当たる件はないものの、古い建物なので霊が出るという噂、原因不明のボヤが発生したり、霊感のあるマンションの清掃スタッフの女性が、霊が写っているという証言をしたりといった話はあるということであった。奇妙なことに取材スタッフが撮影に使用しているカメラでも、そのカメラの位置から撮影すると、ピントが勝手に外れてしまうという現象が再現されてしまった。
松田さんが提供してくれた防犯カメラの映像がここで紹介されるが、何かが写っているようには見えない。
取材班は、秋葉原の「魔術堂」という魔術関係のお店の店主であり、心霊や呪いに造詣のあるKATOR氏に話を聞く。KATOR氏はカメラの故障ではないかと懐疑的であったが、知り合いの霊感を持つという占い師を紹介してもらう。紹介された占い師、遼夜氏はこの映像を見て、映像がぼけてしまうのは手前にいる霊にピントが合ってしまうからだ、とのことであった。「勝手に俺の姿をとるな」という、怒りを感じると語る彼(彼女?)には映像の中の霊が見えるようだ。
ここで取材スタッフが撮影した映像に不可解なものが映り込んでいたことを発見する。すでに紹介されている、現地取材の際にスタッフのカメラまでピントがずれてしまった際の映像だが、よく見るとほんの一瞬、靄のようなものがかかりそれが人の顔にも見える。画像処理を施すと、目を見開き、憎しみに満ちた顔がはっきりとわかった。
感想
取材の過程が長く退屈でした。KATOR氏は「ほん呪73」にも登場していましたね。
最後にバン!と出る、加工を施した人の顔はまあまあ怖いです。
地下アイドル(怖くない)
概要
地下アイドルのイベントステージの映像で、投稿者はイベントを主催している「I.I」氏。とある巫女アイドル、「ゆ☆みこ」のステージで、リアルタイムで編集したメインスクリーンに映し出す映像に、舞台端に制服姿の女性が立っている姿が映り込んだという。その女性ゆっくりと顔を上げ、ステージ上の「ゆ☆みこ」を見つめている。画面が他のカメラに切り替わると、その場所には誰もいない。スタッフは「I.I」さんを通して、霊感を持つというアイドル、「ゆ☆みこ」さんを事務所に呼ぶことにする。
まず、「I.I」さんの提案で、スタッフの一人、「金田もえ」を占ってみることになる。占いの結果は5年ほど前の恋愛を引きずり、負のオーラが漂っている、それ以来男運が悪いのではないか。髪型を変え、色も明るくするとよい、等のアドバイスがある。金田も心当たりがあるようだ。
彼女によると、ステージではあの霊を感じていたという。あの女性の霊は中学時代の同級生で、紗季さんという名であった。彼女にとってのファン1号のようなもので、憧れのまなざしを浴び、慕われていたそうだが、不幸にも事故で亡くなっているそうである。亡くなった直後からも、霊としての彼女の存在は感じており、当初は自分を見守ってくれていると思っていた。だが、最近はそれが変化し、憎しみの感情を感じるという。
あの映像は見てしまうと心身に悪影響が懸念されるほど、強い憎悪の念がこもっており、女性のほうが影響を受けやすいとも語った。ゆ☆みこさんは映像を何回も見た女性スタッフ中心に、簡単なお祓いも披露してくれた。
スタッフはSNSなどのつながりなどを頼りに、中学時代の友人など探し出すため調査を開始する。だが同じ中学出身で、亡くなっているはずの紗季さんと同姓同名のSNSアカウントが発見されてしまった。
続く
感想
地下アイドルといえば、「ほん呪81」の「KIKA」を思い出しますね。地下アイドルを取り上げたのは当然ながら本作の方がが先なんですが。著作権に配慮して、ステージシーンの音声をカットする、踊りが格段にうまい(個人の感想です)など、こちらのほうがよりリアルに感じますね。
ただ「ゆ☆みこ」さんが、演出補の「金田(かねだ)」の漢字だけ見て「きんたさん」(笑)、と呼んだりするなど、キャラがすっとぼけすぎて「大丈夫かよ?この子」と思いましたね。案の定、亡くなっているはずの紗季さんが実在していたアカウントが見つかるなど、「この子嘘ついているんじゃないの?」と思わせる伏線になっているのかもしれません。
何回も「きんたさん」を連呼するので、もう一人の演出補の女性が半笑いだったのが可笑しい(笑)。
さて、写った女性の霊ですが、顔があるのはわかるのですが、制服を着ているようには見えませんでした。はっきりと認識できないのでそんなに怖くないですね。画質も悪いし。
ファミレス(怖くない)
概要
ファミレスの店内。半透明の赤い服を着た女性が奥のレジカウンターを横切る。
このファミレスではポルターガイストのような物音がすることがあり、トイレで幽霊の目撃談もあった。この映像を店に無断でダビングしようと言い出した投稿者の先輩は、バイク事故で亡くなってしまった。他にもこの映像を見た人に不幸が起きているという。
感想
半透明の女性が横切るだけで怖くはありません。
幽霊メイド(切ない?)
概要
魔術堂のKATOR氏から、不可解な監視カメラ映像があるとの情報を得る。秋葉原の街頭を記録したものだが、その中に立ちすくむメイドの姿があった。他のメイドは通行人にしきりにビラを配っているのだが、このメイドはずっと立っているだけ。早朝から夜まで、その場所に俯いて立ちすくむ様子は生気がなく、街往く人々も彼女が見えていないかのようであった。このメイドは幽霊なのであろうか。
KATOR氏は「これは絶対幽霊ですよ」と断言するため、取材を開始する。だが聞き込みをすると、このメイドを見たことがあるという証言が得られる。このメイドはキャリーバッグを持ち、月一くらいの頻度で街角に立っているというのだ。スタッフが、彼女がファミレスで着替えているという情報を得て張り込むと、その女性が都合よく現れた。なんと彼女は幽霊などではなく、実在していたのだ。
さっそくインタビューを試みるスタッフ。街角に立つ彼女は、映像と異なり、軽い笑みを浮かべてビラを持参している。取材するスタッフにメイドとして甲斐甲斐しくおもてなしをする彼女は「エリー」と名乗るフリーのメイドさんであった。メイドにあこがれていた彼女は当初は秋葉原でメイドカフェに所属したいと願っていたが、地方に住んでいること、持病があり通院の関係から上京できないので、少なくとも週3の勤務を希望するお店に所属できないという事情があった。
そこで月数回のペースで秋葉を訪れ、カラオケなどに同伴してお客に奉仕する、フリーのメイドとして活動しているとのことであった。
とんだ勘違いを詫びてその場を後にするスタッフであったが、数日後エリーさんと連絡がつかなくなってしまう。直前のメールでは体調を崩し、入院するかもしれないと語っていたそうである。
そんな折、KATOR氏から、最近の監視映像にエリーさんが写っているとの報を受ける。その映像を確認すると、彼女の前を車が通り過ぎた際にその姿が忽然と消えてしまっているのというものであった。エリーさんの実家に確認するが、いまだ入院中とのことであった。これは彼女の生霊とでもいうべきものなのであろうか。
感想
夢をかなえるために健気に頑張る「エリー」さん。その強い思いが、生霊となって映像に現れた。そういう感じのエピソードなんですが、ちょっとあれ?と思いました。
まず最初の映像なんですが、エリーさんらしきメイドさんが、現われた瞬間と、消えた瞬間のシーンがないことに違和感を感じました。映像の最初からもういるんですヨ。作品中ではこれは実在する彼女という体(てい)なのだと思うのですが、それならキャリーバッグ引き摺ってこの場所に現れるエリーさんが写っていないとおかしい。夜になったらやっぱりキャリーバッグ引き摺って駅に帰る姿が写っているはずでしょ。でもそのシーンがあったらKATOR氏は「これは幽霊ですよ」なんて思いませんよね。
監視カメラが深夜から早朝までは止まってしまう、というならわからないでもないですが(監視カメラの意味があるのか?)、だったらそのことに作内で言及しとけよ。
大体最初の映像のエリーさんの様子もおかしい。チラシを配ろうとするどころか終始俯いているだけで、微動だにしない。あれじゃおもてなしを受けようとか通行人は思わないし、インタビューの時とは全然感じが違う。朝から夜までこの調子では食事はとれないし、トイレにも行けてない。だからこそKATOR氏は幽霊だと思ったわけで、なら現われた瞬間と、消えた瞬間のシーンが…以下ループ。
なんか矛盾していますね。最初の映像は実はエリーさんの実体ではなく、既に生霊が立っていたのだ、という解釈もできるような演出にしたつもりなのでしょうが。まあ、ほんとにメイドへの夢をあきらめきれなくて霊体が立っていると言うのなら、切ない話なのですが。
尚、メイドにあこがれるエリーさんの気迫は凄まじく、「おいしくなる魔法」は、テンションが高いというより、鬼気迫っていてびっくりします。なんか僕が想像しているメイドさんと違う。
続・地下アイドル(痛い)
概要
「ゆ☆みこ」さんの話では、映り込んだ霊はすでに亡くなっている中学時代の友人、紗季さんだというのだが、彼女のSNSアカウントが見つかり、存命中である可能性が高くなった。スタッフは事の真相を確かめるため紗季さんにコンタクトする。
飯田紗季さんは確かに「ゆ☆みこ」さんと同級生であったが、彼女とは親しい友人関係ではなかったという。さらに、実在する紗季さんと同姓同名のクラスメイトはいないし、似た名前の人物もいないそうである。それどころか「ゆ☆みこ」さんがアイドル活動しているということ自体に驚いている様子。むしろ暗くて虐められていたとまで語る。紗季さんは学生時代、子役で芸能活動をしており、それはクラスでも周知され、応援されていたということから、経歴的にはむしろ逆なんじゃね?という話になってしまった。
スタッフは事務所で再び「ゆ☆みこ」さんに話を聞く。調査の結果、紗季さんは亡くなってなどいないし、友人でもなかったことを告げても彼女は言い訳に終始してしまい、話にならない。別室で待機していた紗季さんを連れてこられると、この期に及んであれはアイドルの設定とか言い出し、ごまかそうとする。さらに映像を見た紗季さんから、いじめられていた「ゆ☆みこ」さんへの矛先が別の子に移り、自殺してしまった子に似ていることまで追及されると「プギャー!」とか叫んで部屋を飛び出してしまう。
映像に写った女性は紗季さんではなかった。「ゆ☆みこ」さんはいじめから逃れるために別の子の悪い噂を流したという噂があること、その子とは仲が良かった筈なので恨んでいたのでは、紗季さんが語り、作品は終わる。
感想
なんなのこれ。地下アイドル「ゆ☆みこ」の痛さを楽しむエピソードになってるぞ。
冒頭で「皆さん大丈夫ですか?」とか「かなり危ないですよ」とか霊能者気取っている姿、追及されて、あれは設定とかごまかす態度とか、痛くて、痛くて見てらんない。「ちがくてー」じゃねえよ(笑)。
紗季さんが存命しているという事実を告げられて、「I.I」さんが「えっ!?」とマジに驚いているのが笑えます。
実は「友達と思っていたのに裏切られた、そんな怨嗟の眼差しを向ける少女の霊」だった、という展開が霞んでしまっていました。
感想まとめ
今まで直球で勝負してきたのに、いきなり変化球で来たなという感じです。
スタッフも前回は男1人だったのに若い女性が3人(まだ「きんた」さん以外は顔と名前が一致しませんが)、おまけの男性が1人に増えましたし、「スタッフ」も「演出補」という「ほん呪」と同じ肩書に変わりましたし、「地下アイドル」なんて既に監視カメラじゃないし。菅野君が登場する頃にはもう監視カメラとか関係無くなってしまっているのでは?と予想します。
それくらい大規模なテコ入れに感じました。まあ「ほん呪」と同じ事やってもしょうがないと言うのはわかります。これが良いのか悪いのかわからないんですけれども、まあまあ楽しめましたので、今後に期待したいと思います。
コメント
これも監死カメラシリーズだったのですね。部分的にですが見たことあります。
『ディスプレイモニター』『幽霊メイド』などはまとめて観た覚えがあります。ニコ生のはそれだけ単品でYouTubeに上がってるのを観ましたが、これなどは『ほん呪』にもないパターンの相当怖いものだと思います(それだけに今や古典になった感がありますね)。
かつては良いシリーズだったのですね。笑
>かつては良いシリーズだったのですね。笑
この巻を機に少しづつ変わっていったようです。「地下アイドル」がその嚆矢となったようですね。
「インターネット中継」は良かったですね。それだけに部屋に入ってきた姿が合成っぽいのがほんとに残念です。