はじめに
「放送局に届いたある映像」は、CSチャンネル「エンタメ~テレ(旧メ~テレNEXT)」で制作された、心霊ドキュメンタリー風のドラマ(モキュメンタリー)番組です。完全なフィクションであり、番組の最後にもその旨がしっかりと明示されています。
今回ご紹介するのは、その第3回。サブタイトルは「スプーン曲げ少年」ならぬ、「Tape.3 スプーン戻し中年」です。
1970年代、世間を席巻した第一次オカルトブーム。各地にいわゆる「スプーン曲げ少年」が次々と登場し、超能力者のユリ・ゲラー氏も来日するなど、お茶の間がこの話題で持ちきりだった時代があったのをご存じでしょうか。
概要
2月10日、3本目の映像が届く。「放送してください」と書かれた紙片、あて名はこれまでと同じ筆跡であったが、今回はVHSではなくDVDであった。消印は2月8日で、今回もやはり日曜日である。消印の場所から、調布近辺で投函されたことが判明する。
映像の冒頭、若い男性が室内でカメラに向かい、嘆き悲しみ、あるいは恐れおののいている姿が映し出される。どうやら彼は、動画投稿サイトの配信者らしい。
画面は変わり、野外の映像になる。彼が飲みすぎて公園で寝ていたところ、ホームレスらしき男性と遭遇した。男性の話が面白かったため、自身の配信のネタに使えるかもしれないと考え、撮影を始めたようだ。ホームレスの男性は、かつて自分は「スプーン曲げ少年」だったと語る。若い男性は何とかカメラの前でスプーンを曲げてもらおうと、酒を奢ったりする。ホームレスの男性はひどく酔っているのか、赤信号をそのまま渡ろうとするなど危なっかしい。若い男性が「轢かれますよ」と注意すると、彼は何やら意味深な言葉を返す。さらに、スプーンを曲げるだけでなく、壊れたものを直したり、元に戻したりすることもできるという。
その後、公園でスプーンを曲げてもらおうとすると、ホームレスの男性は急に神妙な面持ちになり、「あんたが壊してしまったものを元に戻してやろう」と告げる。すると突然、若い男性のスマホのインカメラとアウトカメラが勝手に交互に切り替わり始め、彼の背後に「赤い服を着た女」の姿が映り込む。
再び室内の映像に戻ると、配信者の男性は「その直後、自分が殺してしまったはずの『あの子』から電話がかかってきた」と狂乱気味に訴える。やがて、部屋の外の何かに気づいたように目をやり、そのまま部屋を出て行ってしまったところで映像は終わる。
岩澤たちは、この映像に映っている人物の特定に取り掛かる。
感想(ネタバレあるかも)
第3話では、事前の紹介もないまましれっと菊池宣秀氏が調査メンバーに加わっています。実際の放送版では紹介シーンがあったのかもしれませんが、何はともあれ往年の「ほん呪」を彷彿とさせるキャスティングはファンとして懐かしい限りです。現時点ではまだ、これといった活躍は見せていませんが(笑)。
今回届いた映像はこれまでのものとテイストが異なり、ごく最近撮影されたもののようです。映像単体を見る限り、前2作との直接的な関連性は見出せませんが、封筒の筆跡は完全に一致しています。また、本作で初めて明確な心霊現象がカメラに捉えられますが、恐怖の直接的な描写というよりは、ジワジワと迫るような不気味な演出に重きが置かれている印象です。
映像の内容を整理すると、このYouTuberの男性が過去に女性の命を奪っていること、そして「元スプーン曲げ少年」の中年男性がその罪を見透かし、「あんたが壊してしまったものを元に戻してやろう」と告げて被害者の女性を現世に呼び戻した、という構図になります。これは果たして偶然の邂逅だったのか、あるいは何者かの意図が働いているのでしょうか。そして、行方を眩ませたYouTuberの男性の安否も気になります。
物語の謎は深まるばかりですが、1話あたり約10分という短尺のため、3話まで消化しても合計30分ほどにしかなりません。どうやら「メ〜テレ」での放送は全3話構成らしく、今回のエピソードは全体(配信版など)で見るとまだ2話の序盤にあたるようです。展開はスローペースですが、焦らず気長に追っていきたいと思います。
ちなみに、超能力による「スプーン曲げ」や「時計直し」といえば、かつてユリ・ゲラー氏が来日した際の特番を思い出します。テレビの前の視聴者に向かって念を送り、全国から「スプーンが曲がった」「壊れた時計が動き出した」という報告の電話が殺到する光景は、今思えば凄まじい社会現象でした。
日頃からオカルトを頭から否定し、「幽霊なんていない」と鼻で笑っていた私の母でさえ、引き出しのスプーンが曲がっていると騒ぎ立てた記憶が残っています。普段は現実的な人間すら巻き込んでしまう、あの時代の独特な熱気と怪しい空気感。今回の「スプーン戻し中年」というエピソードは、そんなかつての時代の記憶を呼び覚まされる、妙な味わい深さがありました。
それでは。
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