はじめに
「放送局に届いたある映像」は、CSチャンネル「メ~テレNEXT(旧エンタメ~テレ)」で制作された、心霊ドキュメンタリー風のドラマ(モキュメンタリー)番組です。完全なフィクションであり、番組の最後にもその旨がしっかりと明示されています。
今回ご紹介するのは、その第7回。「Tape.7 シリトリ」です。
これまでは10分前後だった各エピソードですが、この「Tape.7」は15分近くと少しボリュームがあります。内容も、小泉さんによる「音楽の家」のムック本編(前編)と、実際の廃墟での出来事編(後編)の2部構成のようになっていますね。
概要
取材班は、例の無料素材サイトに廃墟の写真を投稿した小泉さんという男性にインタビューを行う。彼は若い頃、コンビニ等で販売される心霊系のムック本に携わっており、かつて「音楽の家」の取材を行ったことがある。
当時、その施設は児童養護施設の体を装っていたが、実態は園長・神峰子(じん みねこ)の狂信的な思想に基づき、「超能力を持つ子供」を人為的に作り出すための実験施設だったという噂。小泉さんは近隣住民への取材を重ね、ムック本の記事を編纂した。多少の誇張はあるものの、おおむね証言者の言葉をそのまま記録したものだと小泉は語る。
近隣住民の証言は、にわかには信じられないものだった。「子供を切り刻み、繋ぎ合わせて超能力者を作っている」噂や「園から奇妙な音楽が流れてくる」「深夜、園長が庭に子供たちを集めて号令をかけると、一斉に天に手をかざし、巨岩が宙に浮かんだ」といった、常軌を逸した目撃談まであった。
園長は「邪気を呼び寄せる」として青色を激しく嫌い、自宅や施設の壁など、あらゆる物品を赤く塗らせていたという。だがその後、園長の自宅を兼ねた施設は火災によって焼失。その際に園長と職員の女性が死亡し、施設は閉鎖に追い込まれた。唯一焼け残ったのが子供たちの宿舎であり、例の素材サイトの写真は、この時に小泉さんが撮影したものだった。尚、この宿舎だけは赤い装飾から免れていており、かなりまともである。
その園で育てられた「元スプーン曲げ少年」こそが、あの藤堂栄一郎である。閉鎖後、長野県に移住した藤堂に、小泉さんは当時インタビューを行っていた。超能力少年としての知名度は低く、ローカル局に数回出演した程度だったという。藤堂は園長を狂信的に崇拝しており、「園長の功績を世間に知らしめたい」「何なら復活させたい」とまで語っていた。
記事内では穏やかに見える藤堂だが、実際は相当な曲者だった。「赤信号」の概念が理解できずにそのまま道路を渡ろうとするなど世間ずれしており、園長に深く洗脳されている印象を小泉さんは抱いた。また、施設での縁から、火災で園長と共に亡くなった職員の娘を藤堂が引き取っていたが、インタビュー中に彼女によって家を追い出される一幕もあり、彼女自身はその境遇を酷く煙たがっている様子だった。
当時のインタビュー音声が流されるが、藤堂の会話はどこか異様で、園長に完全に陶酔していた。時折感極まったり、突如として声を荒らげたりする様子が記録されている。
このムック本には、神峰子が超能力少年をテレビ局に売り込んできた際の、PR映像のカット画像が掲載されていた。驚くべきことに、そこに写るピクトグラムは「Tape.1」のキリトリ線のものと完全に一致し、さらに女性の姿は「Tape.2」のクレショフ効果の映像に映っていたあの女性と同一人物であった。この女性こそが、すべての元凶である神峰子なのだろうか。
さらに小泉さんは、「音楽の家」の残骸が取り壊される直前の、きわめて貴重な映像を提供してくれた。別のDVD企画のロケハンで、再びあの地を訪れた際のものだという。
小泉さんとアシスタントの後藤さんがロケハンを進めるなか、後藤さんは物置のような狭い部屋の壁に書かれていた「シリトリ」という落書きを発見する。彼は悪戯心から、その末尾に自分の名前を加筆してしまう。その直後から、後藤さんの様子がおかしくなる。
当時は気づかなかったが、その映像には、神峰子が手を合わせる断片的なカットや、例の不気味な音楽が何度もノイズのように差し込まれていた。後藤さんは映像撮影中にもかかわらず「音楽が聞こえる」「誰かが来いと言っている」と呟き、勝手に「シリトリ」の部屋へと歩き出してしまう。
憤慨しながら後を追う小泉さんは部屋の奥、壊れた赤い電話の受話器を耳に当て、ブツブツと何事かを唱えている後藤さんを発見する。唱えているのは何らかの数字の羅列のようだった。床には赤いチョークで「キリトリ」と書き殴られており、壁にはシリトリの続きが記されていた。
──リンゴ → ゴトウ → ウシロ。
小泉さんが恐怖に駆られて後ろを振り返った瞬間、カメラの映像は激しいノイズとともに途切れる。
最後の数フレーム。そこには、白い布を被った男のような人影が、小泉さんのすぐそばまで迫る姿が映り込んでいた。そして背景には、あの曲の断片が鳴り響いていた。
小泉さんはその場でしばらく意識を失い、目覚めたあとに後藤さんを抱え廃墟を後にしたが、彼はその後早々に実家へ帰ってしまい、そのまま音信不通になってしまったという。
深すぎる闇を前に、取材陣は静かに小泉さん宅を後にする。
感想(ネタバレあるかも)
前編では、「音楽の家」の全貌、「ピクトグラムの映像」、そして「手を合わせている女性」の正体が次々と判明します。宗教的な胡散臭さを感じていた通り、それまがいの施設をめぐる点と線が綺麗に繋がってきました。そして予想通り、あの「スプーン戻し中年」の正体である藤堂栄一郎は、この「音楽の家」の出身でした。
それにしても、若き日の藤堂はなかなかのイケメンです。おそらくは役者さんの実際の若い頃の写真を持ってきたのでしょうが、役柄のせいもあってか、あのイケメンがこんなホームレス然とした姿になり果ててしまったことに、時の流れの残酷さを感じずにはいられません。その時、心の中のもう一人の自分から「オマエモナー」という声が聞こえた気がしましたが、きっと気のせいでしょう(笑)。。(というか私、若かったとしてもイケメンではありませんし)。
また、藤堂の「信号機の色の概念を理解していないという話は「Tape.3」で、あのジジイが赤信号無視して渡ろうとした伏線の回収になっています。
また、今作において「赤」が重要なキーカラーであることは、嫌でも意識せざるを得ません。インタビューを受けている小泉さん自身も赤いシャツを着ていますし、テーブルの上には赤いミニカーが鎮座しており、少なからず「赤」の影響を感じさせます。
続いて後編の「音楽の家」のロケハンシーンですが、こちらはかなり不気味な映像に仕上がっています。何と言っても、あの壁の落書きに自ら名前を加筆するくだりには、「お前は正気か?」とまたツッコミたくなってしまいました。見事なまでの犠牲者フラグです。
加筆された落書き、サブリミナル的に挟み込まれる映像、床の「キリトリ」の文字、そして、そもそも線が繋がっていない「真っ赤な電話」で誰かと会話している後藤さん。この部屋に至る前に、彼は「僕で良かったら」と言い残して自ら呪いの部屋へと赴きます。彼のその姿には、エキセントリックな洗脳(人間の企み)と、心霊的な怪異の力が交錯する、得も言われぬ気持ち悪さが漂っていました。
神峰子を復活させたいと願う藤堂栄一郎の狂信。その願いは今、着実に成就しつつあるのでしょうか。そして、これら一連の怪異が、彼らの言う「超能力」の成れの果てなのでしょうか……。
他に気が付いたこととして、
- 壁の落書き後藤さんは「シリトリ」と読んでいますが、不鮮明なので見ようによっては「キリトリ」と読めなくもないです。因みに床には「チリトリ」が落ちてます(笑)。
- 蛇足ですがこの部屋「リンゴ」が落ちてましたね。リンゴも赤いです。
- 後藤さんと共に撮影している部屋に「Tape.5」の赤い缶箱が落ちている。
- 後藤さんが電話で呟いていた数字。「1?…2…1だね」何か意味があるのでしょうか?電話で数字を選んでいる?自動音声の選択肢から数字を選ぶやつ、あれでしょうか。でもキーは押してないんですよね。
- 小泉さん宅を去る菊池さんと岩澤さんのシーン。小泉さんの後ろ(画面奥)に誰かが立っています。異様に背が高く見えましたが、玄関近くに階段でもあったのでしょうか。
- 小泉さん役の方、心霊モキュメンタリー「心霊玉手匣 constellation」の貫井兄者ではないでしょうか。つい最近、別の作品で弟さん役の方を「クニコから始まる話」で見たばかりだったのでタイムリーでした(笑)。
これまでの投稿郵便物を送りつけてきたのは、藤堂栄一郎本人なのか、それとも彼が引き取ったという当時の職員の娘(女子高生)なのか。謎はさらに深まりますが、物語の全容が少しずつ見えてきて、次回への期待が止まりません。
それでは。
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